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On the Production
by 井口健二
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■母の残像、ナショナル・シアター・ライヴ 2016 「戦火の馬」
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『母の残像』“Louder Than Bombs”
2011年12月紹介『メランコリア』などの鬼才ラース・フォン
=トリアー監督の甥にあたるノルウェーの俊英ヨアキム・ト
リアーの監督第3作にして、初めてハリウッドの製作陣と組
んだ英語の作品。
登場するのは父親と2人の息子の父子家庭。長男は少し離れ
た街で若くして大学教授の職にあり、次男はまだ高校生だ。
そして今は亡き母親は、戦場カメラマンとして戦争被害者の
姿を撮り続け、数々のスクープもものにしていた。しかし帰
国後に襲ったその死は謎に包まれていた。
そんな母親の回顧展の話が持ち上がり、その準備のため長男
が帰宅する。そしてそれに合わせて死の真相に迫る記事の掲
載が決定し、その真相をまだ幼い次男に告げるべきか、父親
と長男の想いは交錯する。さらにその影響からか次男の態度
もおかしくなり始める。
出演は、2014年『ヴァンパイア・アカデミー』などのガブリ
エル・バーン、2016年7月紹介『グランド・イリュージョン
見破られたトリック』などのジェシー・アイゼンバーグ、新
人のデヴィン・ドルイド。そして2013年9月紹介『眠れる美
女』などのイザベル・ユペール。
脚本は監督と、短編映画時代からの盟友エスキル・フォクト
によるオリジナルの作品だ。
ラース・フォン=トリアーの作品は、特に近年では鬼才と呼
ぶにふさわしい作品が多いが、その甥の作品は極めてオーソ
ドックスなドラマだった。しかしその内容は見事に人の心理
を突いたものであり、観客に深い想いを感じ取らせるものに
なっていた。
それは多少特異なシチュエーションにはなっているが、描か
れた内容には普遍性があり、それを描き切った手腕にも注目
が集まるのは当然と言える作品だ。万人に勧めることのでき
る作品であり、正に王道の作品に仕上げられている。これは
見事だ。
なお、作品中には母親の遺品として複数の写真が紹介される
が、それらには実際の戦場写真が数多く引用されており、ま
た挿入される映像も現実のもので、描かれる人間ドラマと同
時に、戦争の悲惨さを伝える作品にもなっている。
公開は11月26日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他にて、全国順次ロードショウとなる。

『ナショナル・シアター・ライヴ 2016 「戦火の馬」』
         “National Theatre Live: War Horse”
2011年12月紹介スティーヴン・スピルバーグ監督作品『戦火
の馬』の基となった舞台劇で、2014年の第1次世界大戦開戦
100周年に演じられた舞台を撮影した映像作品。
物語は映画化されたものとほぼ同じで、1914年の第1次世界
大戦開戦の年にイギリスの片田舎で生まれた1頭の狩猟馬が
歴史の流れに翻弄され、ヨーロッパ戦線に従軍してイギリス
人だけでなく、フランス人、ドイツ人とも交流を持つ。また
その馬の後を追う飼い主の若者の姿を通じて、戦争の悲惨さ
を訴える作品だ。
そしてそこに登場する馬の姿が、映画では実物の馬とCGI
によって描かれたが、舞台でのそれは実物大のパペット。し
かも3人の操演者の姿も観客に曝されているというものだ。
しかしその操演の巧みさと演出の力で、見事に生きている馬
以上の感動を観る者に与える。その様子がしっかりと伝わっ
てくる作品だった。
さらに舞台は、装置としてはスケッチ帳から破り取られた紙
を摸したスクリーンと、そこに背景がスケッチ画風の絵画と
アニメーションでプロジェクションされるだけという極めて
シンプルなもので、その前の回り舞台と出演者が手持ちする
簡単な道具だけで全ての場面が構成される。その構成演出の
素晴らしさでも観る者を惹き付ける。

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10月30日(日)
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