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On the Production
by 井口健二
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■ANNIE アニー、SHOAHショア/不正義の果て、プリデスティネーション
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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ANNIE アニー』“Annie”
1924年に連載開始された新聞漫画“Little Orphan Annie”
を原作として1977年にブロードウェイミュージカル化され、
同年のトニー賞にも輝いた名作舞台の映画版。
映画化は1985年にも1度行われており今回は2回目。しかし
ハリウッドが同じものを2度作るようなまねはしないので、
今回の映画化ではかなりの改変が施されている。その主な点
は物語の現代化だが…
まずプロローグは学校の授業風景。そこではアニーが1930年
代の大恐慌とニューデール政策について、現代的なリズムに
乗せた説明をしている。それは音楽的な違いを示すと共に、
オリジナルへの見事なオマージュにもなっている。
続いて気が付くのは、アニーの住まいが孤児院ではなく里親
のアパートということ。これは孤児院の設定自体が現代には
合わないもので、代わりに手当目当ての里親というのは近年
ニュースなどでもよく耳にするところだ。
一方、ウォーバックスに代わってアニーに関るのは携帯電話
で財をなし、現在はニューヨーク市長選に出馬中のという人
物。元々は子供嫌いだった彼が偶然アニーの危機を救ったこ
とから、選挙宣伝に利用しようと考える。
里親手当に携帯電話、それに選挙戦と、これは正しく現代を
反映した設定だが、そんな設定の中で物語自体は、アニーと
大金持ちが各々の失ったものを見出すという、オリジナルの
舞台で描かれたテーマを忠実に再現している。
これは極めて巧みに現代化が行われていると言えるもので、
それは試写会で隣に座った見るからミュージカルを観馴れて
いそうな女性が、映画の後半では目の周りを繰り返し拭って
いたことからも明らかと言えそうだ。
主演は、2013年2月紹介『ハッシュパピー』で史上最年少の
オスカー主演女優賞候補になったクヮヴェンジャネ・ウォレ
ス。相手役に2004年『レイ』でオスカー受賞のジェイミー・
フォックス。
さらにキャメロン・ディアス、2011年6月及び2013年11月紹
介『インシディアス』などのローズ・バーン、2012年7月紹
介『WIN WINダメ男とダメ少年の最高の日々』などのボビー
・カナヴェイルらが脇を固めている。
映画用の脚本と監督は2011年9月紹介『ステイ・フレンズ』
などのウィル・グラック。脚本には、2010年12月紹介『恋と
ニュースのつくり方』などのアライン・ブロッシュ・マッケ
ンナが協力している。
という作品だが、実は多少気になる点もある。それは物語の
後半のキーとなるアニーの抱える問題が現代に合っているか
どうか。これは1985年の映画化のときにも違和感があったの
だが、当時は1930年代という時代設定で納得していた。
それをそのまま現代に持ってきてよかったものかどうか?
ただしこれに関連して、映画の中では携帯電話に拘る大金持
ちに対する揶揄のようなセリフがあり、それが結末に向かう
伏線にはなっているのだが…
もっとも上述の女性はこれが明らかになる辺りから涙を拭い
始めてもいたので、やはりこれは変えられなかったのかな。
とは言え、スマホを使った最後の展開などは見事に現代で、
これにはやられたという感じもしたものだ。
公開は1月24日からTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショウ
となる。
『SHOAHショア』“Shoah”
『不正義の果て』“Le dernier des injustes”
ナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)を追い続けてい
るフランスのドキュメンタリスト=クロード・ランズマン監
督の作品が纏めて公開されることになり、公開3作品の内の
2本の試写が行われた。
その1本目の『SHOAHショア』は1985年の作品。実は本作は
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01月11日(日)
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