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On the Production
by 井口健二
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■第27回東京国際映画祭《コンペティション部門》
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※今回は、10月23日から31日まで行われていた第27回東京※
※国際映画祭で鑑賞した作品の中から紹介します。なお、※
※紙面の都合で紹介はコンパクトにし、物語の紹介は最少※
※限に留めているつもりですが、多少は書いている場合も※
※ありますので、読まれる方はご注意下さい。 ※
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《コンペティション部門》
『紙の月』
主演の宮沢りえが映画祭の最優秀女優賞を受賞した作品。直
木賞作家角田光代の原作を、『霧島、部活やめるってよ』で
日本アカデミー賞受賞の吉田大八監督が映画化した。物語は
女性銀行員による巨額横領事件を描いたもので、まあそれこ
そ子役の頃から見ている宮沢が、見事に生活に疲れた主婦を
演じ切った。受賞は妥当なところだろう。
『爆裂するドリアンの河の記憶』“榴莲忘返”
早稲田大学を卒業のマレーシアの監督が、自国で実際に起き
た事件を基に映画化したという作品。レアアース採掘工場の
操業を巡って地元の高校教師らが反対運動を繰り広げる。そ
こに日本を含む近隣各国での民衆運動の歴史が再現挿入され
る構成だが…。何とも生硬で青臭さがきつかった。それに民
衆運動として描くべきはこれらの事件ではない気もした。
『壊れた心』“PUSONG WAZAK”
浅野忠信の主演でマニラが舞台の犯罪組織を扱った作品。ク
リストファー・ドイルの撮影で、巻頭の人物紹介などはニヤ
リとさせられる。でもほとんどの台詞を廃した構成は物語の
展開を判り難くし、映像はあるがドラマが不在の感じ。プロ
グラムブックのシノプシスを読んでも?だった。因に監督は
詩人だそうで、挿入歌の歌詞にだけ字幕が付くのも…。
『来るべき日々』“Les Jours Venus”
1951年生まれの監督の作品で、映画の中でも新作を作ろうと
する監督の奮闘が描かれる。今回の映画祭では他にも映画作
りがテーマの作品があって、ちょっとそれらと被ったかな?
また過去の同様の作品へのオマージュみたいなものも散見さ
れ、それが却ってウザイ感じのする部分もあった。作ろうと
している作品の方が面白そうだったかな。
『1001グラム』“1001 Grams”
ノルウェーの度量衡研究所に勤める女性が、父親から世襲の
ように引き継いだ「kg原器」を守る仕事に奔走する。物語は
ワンアイデアでシンプルな作品だが、主人公の仕事への傾注
ぶりが微笑ましく、また結末の重量に関わるエピソードも素
敵だった。廃止された「m原器」の空ケースなど、純粋に科
学に拘るという点でも気に入る作品だった。
『遥かなる家』“家在水草丰茂的地方”
中国の中央部で北は内モンゴル自治区に接する甘粛省に暮ら
す少数民族ユグル族の幼い兄弟を描いた作品。親は遊牧民で
兄は祖父の家で育つ。しかし親と一緒だった弟が寄宿舎にい
たとき祖父が死去、兄弟は親を探すことになるが…。親の愛
を知らないと思う兄と、衣服はお下がりばかりで不満な弟。
雄大な草原を背景に兄弟の確執が巧みに描かれる。
『マルセイユ・コネクション』“La French”
ハリウッド映画でも有名な「フレンチ・コネクション」の撲
滅に関わるフランス側の事情を描いた実話に基づくとされる
作品。フランス映画伝統のフィルムノワールといった感じの
作品だが、ジャン・デュジャルダン、ジル・ルルーシュらを
配した演技陣も往年の俳優たちの渋さには物足りない。実話
に拘りすぎた感じなのかな。
『ザ・レッスン/授業の代償』“Urok”
映画祭の審査員特別賞を受賞した作品。教職と翻訳のアルバ
イトで生活を支える女性教師が、様々な葛藤の中で生きて行
く姿を描く。クラスで起きた盗難事件、主人公はその犯人を
毅然とした態度で探し出そうとするが…。物語は確かに巧み
で、受賞は妥当なところだろう。ただ全体的には物足りない
感じもして、消去法での受賞にも感じた。
『アイス・フォレスト』“La Foresta Di Ghiaccio”
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11月02日(日)
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