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On the Production
by 井口健二
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■ニーナ、サイコメトリー、サイド・エフェクト、人類資金、ホワイトハウスD、ビザンチウム、フローズン・グラウンド、Cハーロック
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※
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『ニーナ/ローマの夏休み』“Nina”
昨年の東京国際映画祭「コンペティション」で上映された作
品。コンペ作品なので会期中に鑑賞して10月28日付けで纏め
て紹介もしているが、今回は日本公開を前にした試写を観直
したので改めて紹介する。
物語の背景は夏のローマ。バカンス中で人影もまばらなその
街に主人公のニーナは東洋への留学を夢見、その勉学のため
に居残っている。そして彼女はバカンスに行く友達に頼まれ
て老犬の世話をしたり、研究者について習字の練習をしたり
もしている。
さらに本来は小学校の音楽教師である彼女は、内緒で声楽の
コーチをしたり…。その他に町には、アパートの子供管理人
や、犬の散歩中に出会ったチェリストの男性や、数人の人々
は暮らしているが、町の全体は普段の喧騒が嘘のように静寂
で厳しい日差しだけが町に溢れている。
脚本・監督のエリザ・フクサスは、世界的に著名な建築家の
娘だそうで、彼女自身も大学では建築学を学んだが、卒業後
にニューヨークで映画制作と脚本のワークショップに参加。
2006年からミュージックヴィデオやドキュメンタリー、短編
映画などを手掛けた後の長編デビュー作となっている。
因に、監督が好きなのはデヴィッド・リンチとフェデリコ・
フェリーニだそうで、彼らの作品にも通じる幻想的な物語が
展開されて行く。ただし物語はあまりテーマ性のあるもので
はなく。実は映画祭で鑑賞したときには意味が良く判らなか
った。
このため今回試写を観直したものだが、結局監督は物語を重
視していないようで、ただバカンス中の普段の喧騒とは違う
ローマが印象的に描かれている作品だった。それが東京の文
化人には心地良さにもなったようで、数多くの人たちから賛
辞が寄せられているようだ。
東京に暮らす人間にとっては、ヨーロッパのバカンスは想像
するものでしかないが、もし日本にもバカンスがあって、東
京がこんな風景になったらそれはそれで面白いだろうとは思
えてくる。
なお映画では、建築家専攻だった監督らしくローマの様々な
建物も随所に収められており、物語の後半でそこに幻想的な
ものが登場してくるのは、なかなかのシーンになっていた。
『サイコメトリー〜残留思念〜』“사이코 메트리”
2010年6月紹介『パラレルライフ』のクォン・ホヨン監督に
よる新作。
監督はデビュー作の前作でも「平行理論」という奇妙な題材
を扱ったが、本作では物体に触るだけでそれが過去に関った
事象を感じ取ることの出来るサイコメトリーという超能力に
ついて描いている。
主人公は、多少問題児の刑事。その刑事の勤務地で幼女誘拐
事件が起きる。そのとき主人公は最初から事件性を主張する
が、身代金の要求もない状況に失踪届けは24時間は受け付け
ない原則の警察署は初動捜査に遅れ、事件は最悪の結果とな
る。
ところがその捜査中に主人公は不思議な出来事に遭遇する。
それは街角の壁に書かれたグラフィティに警察が明らかにし
ていない事件の詳細が描かれていたのだ。そこに手掛かりを
見出した主人公は、そのグラフィティを描いた人物の行方を
追いかけるが…。そして次の事件が起きる。
サイコメトラーを描いた作品は他にもあると思うが、本作で
は一般の人間とは異なる能力を持つことの苦しみが巧みに描
かれる。そしてそれが韓国刑事映画特有の激しいアクション
と絡まって、見事なエンターテインメントに仕上げられてい
る。
また能力の表明の仕方がグラフィティというのも上手いとこ
ろを突いてきたものだ。
出演は、2010年12月紹介『男たちの挽歌』などのキム・ガン
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07月30日(火)
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