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On the Production
by 井口健二
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■母なる証明、ピリペンコさんの手づくり潜水艦、僕らのワンダフルデイズ、無防備、犬と猫と人間と、動くな死ね甦れ!+製作ニュース
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『母なる証明』“마더”
2003年『殺人の追憶』などのポン・ジュノ監督の最新作。ワ
ールドプレミアの行われたカンヌ映画祭では、ある視点部門
の上映にも関わらずレッドカーペットをもって迎えられたと
のことだ。
ポン監督の作品では、前作『グエムル−漢江の怪物−』も紹
介しているが、正直にはあまり感心しなかったハリウッド的
大作の次には、見事に『殺人の追憶』を髣髴とさせる人間ド
ラマが描き出された。
物語は、郊外には広大なゴルフ場を持つ寒村が舞台。そんな
貧富の差が明確に現れる場所で事件は起こる。それは女子高
校生の惨殺事件。しかも遺体は建物の屋上にこれ見よがしに
放置されるという猟奇ぶり。
そしてその事件の犯人として少年のような純粋な心を持った
若者トジュンが逮捕される。しかしその容疑の裏付けは、ト
ジュンが被害者の後を付けていたという目撃証言と、現場に
残されたトジュンのいたずら書きの記されたゴルフボールの
み。
こんな状況証拠のみの逮捕に、トジュンの無実を信じる母親
が行動を開始する。それは誰も信じることのできない孤独な
闘いだった。
この母親役に、韓国芸能界では「韓国の母親」と称されるキ
ム・ヘジャが数年ぶりの映画主演で挑戦し、トジュンには、
「韓流四天王」の1人と呼ばれたウォンビンが兵役後の5年
振りの復帰作として扮している。
共演は、『甘い人生』などに出演のチン・グ、『グエムル』
などのユン・ジェムン、そして『殺人の追憶』などのチョン
・ミソン。新進気鋭からベテランまで監督が思うままの配役
が揃えられたようだ。
なお、物語の舞台には見事な寒村が描かれるが、実はこれは
1ヶ所で撮影されたものではなく、韓国各地の驚くほど多く
のロケ場所を組み合わせて造り出されたとのこと。それぞれ
のポイントごとに全く違う場所で撮影されていたとは…その
巧みさにも舌を巻いた。
ポン監督の描き出す世界は常にただものではない。そこには
人間の根底に潜む醜さや、隠し切れない実像が炙り出される
ものだ。しかし本作の主人公は純真無垢な若者と、息子の無
実を信じて疑わない母親。その純粋な2人を主人公に、それ
は正に究極の母の愛を描く作品になっていた。

『ピリペンコさんの手づくり潜水艦』
          “Herr Pilipenko und sein U-Boot”
ヨーロッパの穀倉地帯とも呼ばれるウクライナの大草原で、
1人で潜水艦を作り上げた男性を写したドキュメンタリー。
年齢は62歳、すでに年金生活で言ってみれば暇を持て余す身
分。それにしても、草原地帯で潜水艦とはずいぶん場違いな
感じだが、元々ウクライナには「草原の潜水艦」という慣用
句があるそうで、本来は「思い掛けないこと」と言うような
意味のようだが、それを実践してしまったと言うものだ。
とは言うものの、その潜水艦はスクラップを寄せ集めたよう
な代物ではあるけれど、水深50mくらいはちゃんと潜れると
いうもので、それを完成した主人公は、今度はその潜水艦を
400km離れた黒海まで運んで潜水してみようと思い立つ。
映画の途中には年金の支払いを受けるシーンがあってそこで
金額も提示されるが、それが日本円でどのくらいの金額かは
判らない。まあ元は軍人でもあったようだからそれなりの金
額ではあるのだろうが、その年金も注ぎ込んでの潜水艦づく
りだ。
その他にも池で魚を育ててそれを捕獲したり、菜園で作った
野菜を売ったりもして、そのお金も潜水艦に注ぎ込んでしま
う。それには奥さんもあきれ顔で、時には怒って涙を流した
りもするが、概ね潜水艦の製作は黙認のようだ。
一方、潜水艦の運搬には友人の運転手とコルホーズの穀物運
搬用トラックの貸し出しを頼みに行くが、これも最初はひま

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08月09日(日)
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