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On the Production
by 井口健二
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■雷神、映画は映画だ、PLASTIC CITY
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『雷神』“Kill Switch”
スティーヴン・セガール印のアクション映画。
物語の舞台はアメリカ南部の町メンフィス。そこで発生して
いる連続殺人事件を追う刑事が本作の主人公となる。しかし
その主人公には、子供の頃に双子の兄を目の前で殺されたと
いうトラウマがあり、その幻影に悩まされ続けているという
シーンも挿入される。
その主人公が追う事件には、娼婦ばかりを狙う第1の殺人鬼
と、被害者の身体に占星術の印を刻んだ暗号で挑戦をしてく
る第2の殺人鬼がおり、凶悪度を増している第2の殺人鬼に
対してはFBIも捜査に参入してくる。
こうして主人公の過去や現在の人間関係や犯人逮捕の華麗な
合気道アクションや、さらに銃撃戦など、諸々の事態が渾然
とした物語が展開されて行く。
と言っても、物語の全体は、縦糸はあるが横糸があまりはっ
きりとはしていない感じで、描かれるエピソードはどれもば
らばら。有機的に繋がっていないから、何かをそこで感じさ
せるようなものにはなっていない。
つまり描かれるそれぞれのエピソードは、ほとんどが他のエ
ピソードには繋がって行かないもので、一体何のために描か
れているのかも判らなくなってしまうのだが…でもまあ、そ
れがB級アクション映画というものなのだろう。
それらをセガールのアクションで繋いでいれば、それで見所
にはなっているというようなものだ。因に本作はアメリカや
オランダ、イタリア、イギリスといった国では直接DVDで
の発売となっているものだが、なぜか日本でだけは劇場公開
される。
2003年以降のセガール作品の大半は同様の公開形式となって
いるが、それでも年2〜4作を作り続けるエネルギーは大し
たものだし、それでそれなりの成果となっているのなら、そ
れも見事なことだと言える。
カナダ製作で共演者にはカナダ人の俳優が多いが、中に昨年
8月に亡くなったアイザック・へイズが出演、これが遺作と
なったようだ。製作総指揮と脚本はセガールが担当し、監督
には、アカデミー賞受賞監督ポール・ハギスのカナダ時代の
盟友だったフェフ・F・キングが起用されている。
『映画は映画だ』“라프 컷”
『悪い男』などのキム・ギドク監督が原案・脚本及び製作を
担当し、愛弟子チャン・フン監督のデビューを飾った作品。
韓国テレビドラマの人気者、ソ・ジソブとカン・ジファンの
映画初共演を実現し、昨年公開の韓国では140万人の動員を
記録しているそうだ。
傍若無人な性格の上に、アクションシーンの相手役に怪我を
負わせてしまったことから、主演映画の配役に行き詰まって
いるスター俳優が、本当の殴り合いになることを了解条件と
して、偶然知り合った本物のヤクザの男を共演者に選ぶ。
そのヤクザの男も、実はヤクザの仕事が行き詰まっており、
また以前には端役で映画出演するなど俳優を志望していたこ
ともあって、その話に乗って2人は互いに夢の実現を目指す
ことになるのだが…
一見、かなり荒唐無稽な感じもするお話だが、これにキム・
ギドク直伝のリアルな演出と現実的な道具立てが相俟って、
それなりに納得のできる物語が展開して行く。そして鮮烈な
結末に至るまで、正に映画を堪能させてくれる。
しかも、映画スターの方はそこそこ戯画化されて描かれるの
に対して、ヤクザの方は人情味も含めた描かれ方になってお
り、その辺で作品全体が、ファンタシーではないけれどメル
ヘンな雰囲気も漂う不思議な感じのものにもなっている。
特に、主人公2人のそれぞれ女性関係を巡るエピソードや、
ヤクザの男の身の処し方などがそれなりに心に響くお話にも
なっており、しかもそれらを期待を裏切らない形で鮮烈に纏
め上げて行く、その脚本も見事だった。
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01月11日(日)
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