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On the Production
by 井口健二
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■ラ・ボエーム、ベンジャミン・バトン、GIRLS LOVE、レスキューフォース、ラーメンガール、へばの、うたかた
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ラ・ボエーム』“La Bohème”
ジャコモ・プッチーニによる名作オペラの映画化。
オペラ界ではドリーム・カップルと言われるアンナ・ネトレ
プコとローランド・ビリャソンを主演に迎え、1978年のオス
カー長編ドキュメンタリー賞候補になったこともあるルーマ
ニアの監督ロベルト・ドーンハイムが演出を担当した。
僕はオペラの舞台は見たことが無いが、この作品を見ての印
象は、恐らく演出は舞台のままで、その舞台のセットをスタ
ジオに構築し、その中を縦横に動き回るカメラワークで撮影
したのではないかと思われるものだ。
従って、観客には舞台の客席とは異なる角度から名シーンを
見られることになるし、特に主演者の評判から察すると、オ
ペラファンには最高の贈り物になるものと思われる。
ただし、映画として観た場合の評価は異なるもので、果たし
てこの作品が映画であるかどうかにも疑問が湧く。確かに、
19世紀半ばのパリの街のVFXによる景観など、映画として
の魅力も有りはするが、全体的には舞台の写しに終始してい
るものだ。
元々監督がドキュメンタリーの人だから、それも仕方がない
のかも知れないが、映画的な演出はほとんど見られない。も
っともあまり映画的な演出を加えるのは、逆に舞台のファン
には違和感になる恐れも有る訳で、そこら辺は難しいところ
だとも言える。
最近は「シネマ歌舞伎」というものも有り、地方で舞台を見
られない人には朗報だと言われているものだが、それに比べ
ると本作は、カメラワークなどの演出は加えられているから
舞台面だけを写したものよりは、映画ではありそうだ。
いずれにしても、日本ではほとんど上演不可能、上演しても
高額の入場料になりそうな舞台を気軽に見られるということ
では、オペラファンには価値ある作品であることは間違いな
いのだろう。
ただ、絵と音を別撮りにしたのは多少疑問が残るところで、
名演と名唱がずれてしまっているのは、映画としては多少ぎ
こちなく観えた。しかし舞台俳優ではそれも仕方なかなとは
思え、ディジタル処理で合わせ込めなかったのかとも思うと
ころだが、それも問題かな。逆に『プライド』の満島ひかり
は良くやったと思えたところだ。

『ベンジャミン・バトン−数奇な人生−』
        “The Curious Case of Benjamin Button”
F・スコット・フィッツジェラルドの短編小説から想を得た
とされる数奇な人生を送った男の物語。
物語の発端は1918年。第1次世界大戦が終ったその日にベン
ジャミンは誕生した。しかしその直後に母親は死亡、しかも
生れた子供を見た父親は、その子を抱えて街に飛び出し、と
ある建物のポーチに置き去りにしてしまう。
その建物は黒人の女性が取り仕切る老人ホームで、医師の診
断で80歳の肉体とされたその赤ん坊は、そこで老人たちと共
に世話をされることになる。ところが、すぐにも老衰で死ぬ
と思われた子供は生き長らえ、しかも徐々に若返り始めた。
こうして、普通人とは反対の成長の過程を歩み始めた主人公
は、20世紀のアメリカを密かに見つめ続けることになる。も
ちろんそこには恋や別れや、旅や戦いなどいろいろな喜び悲
しみを体験しながら。
原作短編がどんなものかは知らないが、映画は上映時間2時
間47分、アメリカを中心とした20世紀史が綴られたもので、
そのスケールの壮大さは、さすが『フォレスト・ガンプ』か
ら『ミュンヘン』まで手掛けたエリック・ロスの脚本という
感じのするものだ。
出演は、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティ
ルダ・スウィントン、ジュリア・オーモンド。主人公を中心
に女性たちとの交流が描かれる。
ただし、ピットが演じた主人公は、年齢ごとに6人ほどで演

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12月07日(日)
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