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On the Production
by 井口健二
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■ボルベール、ラブソングができるまで、石の微笑、チャーリーとパパの飛行機、ルネッサンス、暗黒街の男たち、輝ける女たち
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ボルベール』“Volver”
『トーク・トゥ・ハー』のペドロ・アルモドバル監督が、昨
年のカンヌ映画祭で脚本賞に輝いたスペイン映画。主演のペ
ネロペ・クルスは、アメリカ映画アカデミーの主演女優賞に
もノミネートされた。
監督の生地でもあるラ・マンチャ地方。強い風が吹き、死者
の甦りの話も普通に語られる。そして、精神病患者の発生率
も国内一という。そんな土地柄を背景に、女性たちの数奇な
物語が展開する。
主人公は、幼い頃に両親の許から離れて育った女性。だから
彼女には自分の娘への思いが人一倍だった。その娘が殺人を
犯してしまう。その罪を隠すために奔走する母親。しかしそ
れが思わぬ事態を引き起こす。
一方、彼女には幼い自分を手放した両親との間に確執があっ
たが、その両親もすでに亡くなって久しい。ところが、その
母親が甦ったらしいという噂が近所で立ち始める。幽霊は現
世に残した思いを遂げるために甦るというのだが…
アルモドバルは、今、最も自由に映画を撮れる監督と言われ
ているそうだ。そういう監督だからこそ自由自在に描けた故
郷への想い、そんな感じのする作品だ。
幽霊が普通に語られる何てことは、それ自体が変な話なのだ
が、その変な話を見事に物語にして、母子3代にわたる愛憎
が語られていく。そこには誤解や不知やいろいろなものが介
在するが、それが和解に向けて見事に作用して行く。
しかも、物語全体はコメディタッチでユーモラスに描かれて
いる。まあ中心に殺人という重い題材があるから、コメディ
にしないと描き切れなかったのだろうが、それを実に軽やか
に描いているのにはさすがという感じがした。脚本賞も納得
できる作品だ。
共演者は、母親役にカルメン・マウラ、娘役にヨアンナ・コ
バ。他に、ロラ・ドゥニヤス、ブランカ・ポルティージョ。
主要な登場人物が全部女性というのも素敵なところだ。
なお、原題は「帰郷」の意味とのことだが、1930年代に発表
されたタンゴの名曲から採られたものだそうで、その歌も劇
中で重要な意味を持って歌われている。

『ラブソングができるまで』“Music and Lyrics”
ヒュー・グラントとドリュー・バリモア共演のロマンティッ
クコメディ。
主人公は、1980年代に大ヒットを飛ばしたポップグループで
セカンドヴォーカルだった男。トップヴォーカルがソロ活動
で人気が出たためにグループは解散し、彼もソロデビューは
するが失敗した。
そんな彼に、昔の彼のファンだったという人気女性歌手から
新曲の依頼が来る。だがそれは、6日後にレコーディングす
るアルバムに入れたいという無茶な注文。しかも、作詞は出
来ないとする彼に用意された作詞家は、ちょっと使えそうに
ない奴だった。
そんな時、彼の部屋の観葉植物の手入れをしにきた女性が、
彼の口ずさんだ出だしの詩に、独言で続きを付けてみせる。
それを聞いた主人公は彼女に続きの作詞を依頼するのだが…
彼女にはそういうことをしたくない理由があった。
人生の黄昏時に再び栄光を取り戻したい男性と、過去の過ち
に囚われて前に進めない女性。そんな2人がお互いを見つめ
あって、新たな世界へ1歩を踏み出そうとする。映画が人生
の応援歌であるとするなら、その見本のような作品だ。
脚本監督は、サンドラ・ブロック主演の『トゥー・ウィーク
ス・ノーティス』を手掛けたマーク・ローレンス。同作に出
演したグラントともう一度組みたいと考えてこの脚本を執筆
したとのことだ。
しかし、出演依頼をしたとき、今まで楽器も歌も経験がない
グラントは出演を渋ったそうだ。ところが、その様子に脈が
あると踏んだ監督は、さらに歌と演奏の場面を増やしてしま
ったと言うのだから、グラントも大変な監督に捕まったとい
うところだろう。

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02月28日(水)
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