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On the Production
by 井口健二
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■ココシリ、奇跡の夏、ブギーマン、ハチミツとクローバー、ビースティ・ボーイズ、ダ・ヴィンチ・コード
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ココシリ』“可可西里”
前回紹介した『ジャスミンの花開く』に続き、2004年の東京
国際映画祭で上映された作品の公開が決定したので、改めて
紹介する。これも当時の紹介文から再録すると…
コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した作品。
ココシリとはチベットの地名で、中国語では「可可西里」と
書くらしい。映画の中の説明によると、チベット語では「美
しい山」、モンゴル語では「美しい娘」の意味だと言う。映
画は、この地域で1996年から97年に掛けて起きた実話に基づ
くものだそうだ。
この地域でのチベットカモシカの個体数が、毛皮を狙った密
猟で激減し、それを守ろうとした人たちが民間で山岳パトロ
ールを組織して密猟団のボスを追跡する。その行動が同行し
た新聞記者によって報道され、最終的には政府を動かしたと
いう物語だ。
物語は、パトロール隊員の一人が密猟団に殺され、それを記
事にしようとした新聞記者がココシリを訪れるところから始
まる。ちょうどその時、密猟団の動きが察知され、記者も同
行してそれを追跡することになるのだが…
彼らは民間組織ゆえに資金もなく、人材も乏しいままで、荒
野を追跡して行く。これに対して密猟団は、当然資金も豊か
で人材や武器も揃っている。しかもそこには、過酷な自然条
件や高山病、さらに流砂などの危険が待ち構えているのだ。
以前に紹介した『運命を分けたザイル』も今回(映画祭)の
特別招待作品として上映されているが、それにも増して過酷
なサヴァイヴァルが繰り広げられる。
それにしても、ここまでしてカモシカを守ろうとした彼らの
原動力は何だったのか…。それが映画の中にもほのめかされ
ているように、決してきれいごとだけではなかったという辺
りも、映画の真実味を増しているように感じた。
以上が当時の紹介文だが、実は、映画祭のカタログでは上映
時間が102分と記録されているのに対し、今回の公開版は88
分に短縮されている。
しかし、どこが削られたのかと言われると、具体的には思い
出せない。多分、それぞれのシークェンスが少しずつ短くな
っているものと思われるが、そのせいか物語の進行は速く、
サクサク進んで行くような印象は受けた。
とは言えこの作品は、上映時間が短くなったからといって軽
くなるような内容のものではない。実話に基づく壮絶な物語
は、2度目に見ても充分に心に響くものだった。上映時間が
短くなった分、より多くの人に見てもらいたいとも思った。

『奇跡の夏』(韓国映画)
小児ガンの子供を抱える家族を描いた実話に基づく作品。
主人公は小学校低学年の少年。兄が一人いるが、その兄は最
近体調の勝れない日が続いている。これに対して仕事を持つ
母親は、塾をサボってばかりの2人を叱りつけるが、その目
の前で兄が倒れて…
自分も子育てを経験した親として、子供の病気ほど辛いもの
はない。ましてやそれが不治の病では…ということで、普通
はお涙頂戴の感動作になる題材だ。そして、もちろん本作も
感動作ではあるが、主人公の大活躍(?)がそれだけではな
い作品に仕上げている。
この兄の病気によって、弟の主人公はどうしても行動を制限
され、家族からの愛情も半分以下になってしまうのだが、そ
れでもこの少年はめげない。彼は兄のためにいろいろな冒険
をし、それが彼自身を成長させて行く。それがこの作品の真
のテーマでもある。
その冒険は、ある部分ではかなりファンタスティックに描か
れ、また他の部分では現実を背景にしたドリーミーなものに
も描かれる。もちろんそこには御都合主義も散見されるが、
弟の夢物語とも解釈できる展開がそれをカバーしてしまう。
現実をそのまま描くと辛くなりすぎる題材を、夢物語で隠す

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05月14日(日)
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