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On the Production
by 井口健二
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■リバティーン、転がれ!たま子、ウォレスとグルミット、沈黙の追撃、アブノーマル・ビューティ、僕の彼女を知らないとスパイ、ジャケット
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『リバティーン』“The Libertine”
王政復古期の英国の放蕩詩人、第2代ロチェスター伯爵こと
ジョン・ウィルモットの生涯を描いた舞台劇の映画化。
オリジナルの舞台ではジョン・マルコヴィッチが主演したよ
うだが、自身で製作も手掛けた映画化では、彼は国王の役に
下がって、主人公はジョニー・デップが演じている。
1660年代のイギリス、王政復古の時代。ウィルモットは国王
とのいさかいから地方に追放されていたが、3カ月でその罪
を解かれてロンドンに戻ってくる。そこで久しぶりに舞台小
屋を訪れたウィルモットは、実力を発揮できない一人の女優
バリーに目を止める。
観客のブーイングの中、楽屋に戻ったバリーを訪ねたウィル
モットは、彼女に演技指導を申し出る。これに対して、最初
はウィルモットの放蕩の噂に及び腰だった女優も、次第に彼
の熱意を感じて演技論を闘わせる。そして彼の指導が実を結
び、彼女の演技が開花して行く。
一方、ウィルモットの放蕩ぶりには手を焼きながらも、その
才能は認めている国王は、フランス大使を迎える重要な会で
上演される芝居の脚本を彼に依頼する。そしてバリーには彼
の見張り役を命じる。
ところが彼が書き上げた戯曲はとんでもない代物で、舞台稽
古では主演俳優が次々に離脱を表明。それでも芝居は何とか
完成して、フランス大使を招いた会が催されるが…
アメリカではRレイトで公開され、映画自体も巻頭で主人公
が画面に向かって「諸君は私を好きになるまい」と語りかけ
るなど、かなり奇を衒った始まり方をする。しかし、物語は
至って真面で、放蕩の烙印を押された男の切ない生涯が見事
に描かれている。
また舞台劇らしく台詞も多彩で、シェークスピアの引用など
も含めたいろいろな警句や名台詞が次々に登場する。それを
デップや、相手の女優役のサマンサ・モートンが見事な芝居
で見せてくれる作品だ。実際エンディングでは涙を拭う人も
いるような作品だった。
ただし、Rレイトにせざるを得ない卑猥な台詞や際どい描写
も満載の作品で、まあそれが最近のデップを目当ての観客に
どう受け取られるかというのが興味津々のところだろう。
後は、ロウソクの灯りだけだった当時の芝居小屋を忠実に再
現しようとした映像はかなり暗めで、それなりに映像は捉え
られてはいるが、多少気になった。また後半のデップのメイ
クは多分舞台ならこれでも良いのだろうが、映画では…とい
う感じのものだった。
以下ちょっとネタばれです。
実はエンドクレジットで、「思い出に」というようなテロッ
プが出て、どうせ製作者か監督の思い出だろうと気にせず眺
めていたら、その2枚目にマーロン・ブランド、3枚目にハ
ンター・S・トムプスンの名前がそれぞれ1画面1人ずつの
名前で表示された。
1枚目は見過ごして誰だか判らないが、この2人は何れもデ
ップの関係者と言える。特にトムプスンに関しては、今回の
役柄は同じように飲んだくれの作家の役でもあった訳で、デ
ップがどのような気持ちでこの役を演じたか考えてジンと来
てしまった。
デップの人柄も感じさせるクレジットだった。
『転がれ!たま子』
新藤兼人監督の孫で、2000年に『LOVE/JUICE』と
いう作品でベルリン映画祭のフォーラム部門新人賞を受賞し
ている新藤風監督の第2作。
24歳になっても世間に出て行くことのできない女性が、ある
切っ掛けで外に出て行くまでを描いた作品。これにかなり寓
話的なエピソードや現代風俗のようなものも織り込んで、多
分若い人には納得できるのではないかという作品に仕上げて
いる。
主人公のたま子は24歳。母親は美容院を営み、高校3年生の
弟がいて就職活動も始めているが、彼女自身は自分の部屋に
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12月29日(木)
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