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On the Production
by 井口健二
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■女は男の未来だ、秘密のかけら、僕のNYライフ、ダイヤモンド・イン・パラダイス、少林キョンシー、七人のマッハ、トレジャー・ハンターズ
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※
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『女は男の未来だ』(韓国映画)
ホン・サンス監督による2004年カンヌ映画祭コンペティショ
ン部門の正式出品作品。
サンス監督の作品では、2000年以降の『オー!スジョン』と
『気まぐれな唇』は見ているが、各映画祭で受賞した1990年
代の2作品は見ていない。また、見ている2本はいずれも男
女の関係を描いたもので、特にその大胆なベッドシーンの描
写には驚かされたものだ。
そして今回の作品もベッドシーンはもちろん健在だが、監督
は以前にも増してシニカルに男女の関係を見ているようで、
ますます面白くなってきたような感じがする。
登場人物は、大学の美術講師の男と、その先輩で映画監督の
男。映画監督がアメリカから帰国して美術講師の家を訪ねる
が、過去に経緯があったらしい講師の妻は監督を家に上げる
ことを許さない。しかし講師は監督を庭にまでは引き入れ、
初雪を踏ませ、プレゼントという。この辺りは意味深だ。
そして2人は、近所の中華料理屋で酒を酌み交わしながら思
い出話を始めるが、交互に給仕の女性を口説くなど本性が現
れてくる。やがて話は、監督が渡米前につきあっていたソナ
のことに及び、2人は彼女の住む町に向かうことになるが…
他愛ない会話と、そこに潜む厳しい現実。女は男を忘れてい
ないが、男はそんな女の気持ちに応えられず、ぐずぐずした
ままちょっとした行き違いで全てを失って行く。願望と現実
が交錯して、現実の厳しさが突きつけられる。
物語全体は、喜劇と言うほどではないが軽い小噺集のように
作られている。しかし、その小噺の積み上げがぐさぐさと刃
を突き立ててくる。サンス監督の作劇は、ある意味男女の関
係に絶望しているかのようにも見えるが、監督の現実はどう
なのだろうか。
出演は、サンスの分身とも言える映画監督役に『JSA』な
どのキム・テウ、美術講師役に『ナチュラル・シティ』など
のユ・ジテ、そしてソナ役は元準ミスコリアで本作が初主演
のソン・ヒョナ。それぞれ駄目な男と駄目な女を見事に演じ
ている。
監督の新作『映画物語』は、今年のカンヌ映画祭のコンペテ
ィション部門に2年連続で出品されたようだが、この物語の
先に何があるのか早く見てみたいものだ。
『秘密のかけら』“Where the Truth Lies”
2003年7月に『アララトの聖母』を紹介しているアトム・エ
ゴヤン監督の最新作。
実はエゴヤンの作品は、今回より前には『アララトの聖母』
しか見ていない。その感想は以前に書いているが、東欧から
の移民の子であることや前作の印象で、何となく政治的な背
景の強い人のような印象を持っていた。
ところが今回の作品は、元々が2004年のネロ・ウルフ賞を受
賞したというミステリー小説の映画化であり、しかも背景が
1950年代のアメリカ芸能界と1970年代のハリウッドというこ
とで、僕には興味津々、実に楽しめる作品だった。
発端は1972年。1人の女性新進ジャーナリストが、15年前の
とある事件の謎を追求しようとしていた。それは当時女子大
生だった女性の死にまつわるもので、その事件は、チャリテ
ィにも熱心だった人気コンビの解散につながった、とも言わ
れていた。
取材の過程でコンビの一方に面会した彼女は、彼が執筆中だ
という自伝の原稿を渡されて、記事をまとめても無駄になる
と言われてしまう。しかしコンビの他方と面会した彼女は、
100万ドルの契約金で全てを語るという約束を取り付ける。
ところが彼女が取材を進めるうちに、事件は思わぬ方向へと
進展して行く。そしてついに事件の全貌が明らかにされるの
だが…映画はその事件の顛末の謎解きを、2つの時代を交差
させながら見事に描き挙げたものだ。
主人公のジャーナリストを演じるのはアリソン・ローマン。
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10月14日(金)
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