ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■龍城恋歌、アイデンティティー、ネレ&キャプテン、フレディVSジェイソン、マッチスティック・メン、しあわせな孤独、MUSA、NCW
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※
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『龍城恋歌』“龍城正月”
『HERO』のチャン・イーモウ監督が製作総指揮を手掛け
た96年の作品。監督には、オスカー候補になった90年の『菊
豆』でイーモウと共同監督を手掛けたヤン・フォンリャンが
単独でクレジットされている。
舞台は19世紀か20世紀初頭の中国。婚礼の日に起きた一族虐
殺の中を偶然に難を逃れた花嫁と、腕利きの刺客であるが為
に女に裏切られた男。その日まで人に恋することのなかった
2人が、女の望む仇討ちという目的のために巡り合い、その
過程で愛に目覚めて行く。
しかしその仇討ちを成就するためには、2人には過酷な試練
が待ち構えていた。
2つの家の抗争を巡る因果の物語は、一種の武侠物語にも通
じるところがあると思うが、この作品ではその物語に男女の
愛を織り込んで、イーモウ作品らしい素敵な物語に仕上げて
いる。そして映像では、これまたイーモウ作品らしい色彩表
現に溢れている。
製作総指揮とは言いながら、これは間違いなくチャン・イー
モウの作品と言えそうだ。
テーマや展開はクラシッカルだが、ストーリー展開にも無理
がなく、またぎこちなく愛を確かめ合って行く2人の描き方
も見事で、1時間半の上映時間を充分に楽しめた。
『“アイデンティティー”』“Identity”
『17歳のカルテ』で精神病医学の盲点を突いたジェームズ・
マンゴールド監督と、脚本は『キラー・スノーマン』のマイ
クル・クーニー。この2人が仕掛けたのは、連続殺人を犯し
た精神病患者を背景に置く、見事な心理サスペンスだった。
死刑が翌日に迫った男の再審請求が受理される。男の犯した
罪はアパートでの大量虐殺。再審の審議のために嵐の中を深
夜に呼び出された判事達はいらだっている。しかし弁護士が
同席を要求した死刑囚の到着が遅れている。
一方、嵐の中、人里離れたモーテルに閉じ込められた10人の
男女。そこには、娼婦や女優や家族づれ、そして犯罪者を護
送中の刑事など、性別や年齢、経歴もまちまちな男女が集ま
っていた。そしてその中の1人1人が死んで行く。
それは殺人だけでなく、明らかな事故死もあったのだが、そ
の死体のそばには、ナンバーのカウントダウンするモーテル
のルームキーが置かれていた。
実は大きなトリックがあるのだが、それはここでは明かせな
い。結局、こういう物語の展開というか、トリックは、見る
側がそれに同調できるかどうかが鍵になると思うが、僕は気
に入っている。上に書いた監督の前作と比較するとかなり面
白いとも感じた。
映画は巻頭で、フラッシュバックを上手く利用して観客を映
画の舞台に引き摺り込んで行く。しかも嵐という設定が違和
感を消し、その世界に入って行くことを助けているようだ。
この演出とシナリオの巧みさがアメリカでナンバーワンヒッ
トに輝いた理由だろう。
かなりグロテスクなシーンはあるが、いわゆるスラッシャー
(と最近は呼ぶらしい)ムーヴィほどではなく、映画の手法
を最大限に活かした見事な作品といえる。
『ネレ&キャプテン』“Wie Feuer und Flamme”
1989年のベルリンの壁崩壊以前の東西ベルリンを舞台にした
青春ドラマ。
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09月16日(火)
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