ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460048hit]

■未来はボクらがつくるんだ、死霊のはらわた、絶叫学級、ゾンビ・オリンピック、フィギュアなあなた、桜姫、クロユリ団地
した日本映画も含めて、特に選んだ訳でもないのだが、そん
な作品の連続になってしまった。
本来、この種のSFやファンタシーの要素を含む作品はお子
様向けと言われてきたし、逆に子供たちに夢を与えるために
この種の作品の存在があるとも考えてきたが、特に日本映画
で今回のような傾向が強いのは、何か歪みがあるとも感じて
しまうところだ。
ただ本作に関しては、太秦のスタッフが大いに力を発揮した
のであろう時代劇の雰囲気は、2010年8月紹介『大江戸りび
んぐでっど』などよりはずっとらしさが漂っていたし、こん
なところでその雰囲気が味わえたのも嬉しく感じられたもの
だ。

『クロユリ団地』
秋元康企画、前田敦子主演によるホラー作品。監督は『リン
グ』などの中田秀夫。
秋元康企画によるホラー作品というと、2004年から3作品が
公開された『着信アリ』が、その後にハリウッドリメイクも
される評判となったが、長年ホラー映画を観てきた僕自身は
あまり関心はしなかった。
本作もそんな流れの作品で、中田監督の起用には期待も持っ
たが、現実はそう甘くはなかったようだ。ただ秋元=AKB48
の路線にはこれで充分なのだろうし、それは『着信アリ』の
当時よりさらに有効なのかもしれない。
物語は、団地に引っ越してきた若い女性が主人公。両親と歳
の離れた弟がいて、その家から彼女は介護士になるための学
校に通っていたが…。向かいのドアの住人は引越しの挨拶に
行っても姿を見せず、早朝目覚ましが鳴り響いたりする。
そして彼女は、団地内の公園で1人で遊んでいる少年に声を
掛けるが、そこで少年は向かいのドアの部屋を指差し「おじ
いちゃんに遊んでもらう」と話す。しかしその直後に少年は
走り去ってしまう。
ここまでで、最近のホラー作品を見慣れていると大体ネタが
割れてしまうが、作品はそこからも奥目もなくその路線を突
き進む。それは最近の映画を見ていない観客には新鮮なもの
かもしれないし、本作の狙いはそこで良いのだろう。
それに独居老人の問題など、それなりに社会性のある題材は
取り上げられていたものだ。
共演は、成宮寛貴、勝村政信、西田尚美、田中奏生。他に、
高橋昌也、手塚理美、並樹史朗、筒井真理子、諏訪太朗、柳
憂怜、青山草太、佐藤めぐみ、岩松了、朝加真由美らが脇を
固めている。
脚本は、2006年7月紹介『ミートボール・マシン』などの加
藤淳也と、2009年5月紹介『呪怨・白い老女』などの三宅隆
太。音楽は、押井守監督作品などの川井憲次が担当した。
中田監督の『リング』以降、いわれのない地縛霊などが無関
係の人間を襲うというのが日本のホラー映画の定番になって
しまったが、本作もその流れの作品。
ただ本作では主人公にも仕掛けがあって、それが恐怖を呼び
込んでしまう面もあるが、それも最近のホラーには有り勝ち
な設定で、言ってみればホラー映画の最近の傾向を集大成し
たような作品。それらを卒なく取り入れているのが秋元康ら
しさといえばその通りの作品だ。

04月20日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る