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On the Production
by 井口健二
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■ダイアナ・ヴリーランド、故郷よ、マーサあるいは…、タリウム少女の…、ももいろそらを、砂漠でサーモン…、しあわせカモン、立川談志
それは事前の情報をほとんど入れずに観ていた僕には、例え
ば後半のミュージシャンへの変身が唐突にも感じられたもの
だ。ただしそれは、事前の情報がしっかりあれば良かったの
だろうし、多分観客は承知で観に来る作品だろう。
しかしもう少し考えていて、物語の前半に登場し主人公に絵
を託す少女の存在が蔑ろにされていることに気が付いた。こ
の少女の絵は最後まで登場するものだし、それならそれなり
の話もあっていいのではないかとも感じたものだ。
もちろん本作は実話に基づくものだから、その点は仕方ない
面はあるが、あくまでも映画として仕上げるのなら、その辺
まで気を使って欲しかった感じも持った。どう纏めたら良い
かと言われても、俄かにアイデアは浮かばないが。
『映画・立川談志』
昨年11月他界した落語家立川談志の高座2席と、彼独自の落
語論、さらに生前家族が撮影した映像などを編集した作品。
高座は丸々2席入っているからドキュメンタリーとは言えな
いが、それに先立つインタヴューなどでは、師匠の人となり
なども紹介され、人間ドキュメンタリーとしてもそれなりの
作品になっている。
その師匠が展開する落語論は、今更ながら真剣に落語と対し
ていたことがよく理解でき、ある意味志半ばで逝ってしまわ
れたことが残念にも思えるものになっている。特にその中で
紹介される「黄金餅」の抜粋は、本当ならその前の下りから
聞きたくなるものだが、紹介される部分には正に人間の業が
演じられているものだ。
そして落語チャンチャカチャンを含む「やかん」の高座が紹
介され、さらに家族旅行の風景などが挿入されて、お目当て
の「芝浜」の高座となる。
「芝浜」は、中学生くらいから落語が好きだった僕自身は、
何人かの高座を聞いた記憶がある。それはオーソドックスな
人情噺で、何時もフムフムと聞いていたものだ。しかし生前
の談志師匠の高座は聞いた記憶がなく、今回はそれが最大の
楽しみだった。
そのお話は、落語では著名なものだし、知りたければ本作を
観てもらえば良いが。特に談志版では後半の妻が告白を始め
てからの下りが素晴らしく、聞きながら涙を抑えられなかっ
た。僕自身この話でこんなに泣いた記憶はないから、これは
もしかすると談志師匠の演じ方によるものかもしれない。そ
んなことも考えながら聴き惚れてしまった。
師匠は映画好きだったようで、生前には試写会場で何度か遭
遇したこともある。その中では、作品が何だったかは忘れた
が京橋の試写室で、ほぼ中央に座っていた師匠が映画の途中
で突然立ち上がって出て行ってしまったことがあった。
その際に外からは「詰まんねえんだもん」というような声が
聞こえてきたが、実際に映画は、僕も許されるなら出て行き
たいと思うような作品だったと記憶している。それでも僕は
我慢して最後まで観ている訳だが…
スクリーンの師匠の姿を観ながら、ふとそんなことも思い出
していた。
* *
11月11日のサッカーJ2リーグの最終節で、僕の応援する
湘南ベルマーレがJ1リーグに昇格しました。今年はホーム
&アウェイ42試合の全てを観戦し、自分でも思い出深いシー
ズンでしたが、さらにこのような結果が待っているとは嬉し
い限りでした。
今年は幸い映画のスケジュールと被ることが少なく、目標
を達成できましたが、来季も許される限り映画とサッカー観
戦を続ける所存ですので、何卒よろしくお願いいたします。
11月18日(日)
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