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On the Production
by 井口健二
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■アクシデント、孔子の教え、くまのプーさん、ラビット・ホール、カンパニー・メン、サンクタム(再)、タナトス+追悼
様と関りながら自らのプロボクサーへの道を歩み出す。
物語は竹原の自伝と言うものではないようだが、彼が選手生
活の中で見聞きしたり妄想したようなことが描かれているの
だろう。それはそれなりに真実味のあるものでもあるし、観
ていて違和感もなく鑑賞することが出来た。
以前にも書いていると思うが、僕は珍秘らが殴り合っている
だけのお話は大嫌いで、本作も最初の内はそのような色合い
も観えるのだが、そこから後の展開が真っ正直で、そこには
好感が持てたものだ。
しかも本作では、演じている役者たちにボクシングの経験者
が集められているようで、特に後半の試合のシーンの迫力は
なかなかのものだった。それは逆に前半の喧嘩シーンではフ
ァイトポーズが取れないためにぎこちなさが出たりもしてい
るが、それが主人公の成長を描くのにも役立ったようで、妙
な納得もしてしまった。
主演は2008年『炎神戦隊ゴーオンジャー』などの徳山秀典。
共演は、2005年6月紹介『せかいのおわり』で店長役の渋川
清彦、2008年『20世紀少年』などの平愛梨、2008年8月紹介
『キズモモ』などの古川雄大、そして2006年『仮面ライダー
カブト』などの佐藤祐基。
他に元日本ライト級新人王で俳優の大嶋宏成、2003年『仮面
ライダー555』などの大口兼悟。さらに秋本奈緒美、升毅、
梅沢富美男らが脇を固めている。また、竹原やガッツ石松、
輪島功一、薬師寺保栄らの元世界チャンピオンが特別出演し
ている。
脚本、監督、編集はピンク映画、Vシネマ出身の城定秀夫。
低予算でも期日通りに予算以上の作品を作ることで定評のあ
る監督だそうだが、本作でも、恐らく脚本段階から撮影順な
ども考えられた効率的な作品が見事な完成度を観せている。
        *         *
追悼
 日本SF界の巨星とも言うべき作家の小松左京氏が亡くな
られた。
 僕と小松氏のお付き合いは1970年の大阪万博の年に、氏が
中心になって開催された「国際SFシンポジウム」の事務局
に学生アルバイトとして入らせて戴いてからのことだ。それ
から41年間にも亙ることになったが、その間には、氏が葬儀
委員長を務められた故大伴昌司氏の葬儀や、映画『さよなら
ジュピター』の準備会議への参加、「小松左京研究会」の発
足の橋渡しなどいろいろなことがあった。
 そこには様々な思い出も去来するものだが、僕の中では、
「国際SFシンポジウム」の事務局で精力的に活動されてい
たお姿が目に焼き付いて離れない。それは正に、1973年版の
映画『日本沈没』で主人公の肩をポンと叩いて「ヨッ!」と
声を掛けるあの雰囲気そのままだった。そして20歳近くも年
の違う若造の僕らの発言に対しても、いつも真剣に耳を傾け
て的確な答えを出してくださる、そんな面倒見の良い伯父貴
のような方だった。
 そんな小松氏に、僕は最後まで甘え切ったままで終ってし
まった様な気がする。晩年の車椅子生活になられてからは、
ご本人も相当に辛かったであろうと想像されるが、聞けば最
後はご家族に囲まれて機嫌良く旅立たれたとのこと。あちら
の世界には、星さんや矢野さんや、半村さん、光瀬さん、野
田さん、手塚さんなど昔の仲間も大勢待っているはず、今は
そんなSFの同志たちと楽しく再会されているのかな。その
様子を想像しながらご冥福を祈らせてもらう。
 小松さん、長い間本当にありがとうございました。

08月07日(日)
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