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On the Production
by 井口健二
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■アバンチュールはパリで、2012(特別映像)、アニエスの浜辺、わたし出すわ、イメルダ、ウォッチャーズ、虫皇帝、プール
で、特に角や前脚を失っても闘いを挑んで行くなどの闘争心
には、所詮は虫の本能とはいえ、何とも言えないものを感じ
させられた。

『プール』
『かもめ食堂』『めがね』でも共演した小林聡美ともたいま
さこの2人が、タイのチェンマイで暮らす日本人を演じる作
品。ただし脚本と監督は前2作の荻上直子から替って脚本家
の大森美香。漫画家桜沢エリカの書き下ろし原作を大森自身
の脚色で映画化している。
チェンマイ国際空港に1人の若い日本人女性が降り立つ。到
着ロビーに出てきた彼女は誰かを探しているようだが、迎え
に来ていたのは1人の日本人男性。その男性の車に乗った彼
女は、途中から同行した中年の日本人女性と共にとあるゲス
トハウスにやってくる。
そこでは1人の日本人女性とタイ人の少年が彼女を待ってい
た。そして歓迎の料理も用意していたのだが、若い女性はそ
の歓迎も受けずに部屋に引き籠ってしまう。こうして若い女
性と彼女を待っていた女性とのちょっとぎくしゃくした生活
が始まるが…
そんな2人の関係がやがて明らかになり、その周囲の人々が
抱える問題も徐々に描かれて行く。しかしそれは当事者にと
っては重要なことでも、傍から観ればゆったりとした時間の
中に飲み込まれてしまいそうな些細なことかも知れない。
映画を観ている間は、小林、もたい共演の前2作と同じ雰囲
気を味わえた。それが良いか悪いかは別にして、これは最早
1つのブランドとも言えそうだ。そんな中で食材市場や、コ
ムローイと呼ばれる熱気球のようなタイの風物も織り込んだ
物語が展開して行く。
3作を並べるとお話はどちらかというと『めがね』の方に近
いかも知れない。それは家族の話が背景に在ったりというよ
うなことから受ける印象かも知れないが、各エピソードがか
なり飛び抜けていた『かもめ食堂』に比べるとそれなりに現
実的なお話だ。
それでもまあ、全体の雰囲気は共通しているから前2作が好
きな人には受け入れられるだろう。2人以外の共演者は「花
椿」などのモデルの伽奈と、『めがね』にも出演していた加
瀬亮。それにタイでのオーディションで選ばれたシティチャ
イ・コンピラ。
なお小林は、『かもめ食堂』のフィン語に続いて、本作でも
特徴のあるタイ語をスクリーン上では流暢に喋っている。僕
自身がタイ語を理解するものではないし、本当はどうなのか
は解らないが、タイ映画で聞き慣れた感じと違和感がないの
は素晴らしいものだ。
また今回の小林は、ギターの弾き語りと劇中歌の作詞作曲に
も挑戦しており、その出来もなかなかのものだった。

07月26日(日)
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