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On the Production
by 井口健二
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■スラムドッグ、イエスマン、ロックンローラ、トワイライト、ビバリーヒルズ・チワワ、アンティーク、レイチェルの結婚、ベルサイユの子
なお撮影は、ソニー製映画用HDヴィデオで行われており、
エンドクレジットには久しぶりにCineAltaのロゴマークが表
示されていた。
またパーティや結婚式のシーンなどでは、出演者が持つカメ
ラで撮影された映像も使用されており、その撮影者としてデ
ミ監督の師匠のロジャー・コーマン監督などがゲスト出演し
ていたようだ。
『ベルサイユの子』“Versailles”
フランスの名優ジェラール・ドパルデューの息子で、昨年の
11月に急逝したギョームの主演による昨年のカンヌ国際映画
祭‘ある視点’部門の出品作品。
マリー・アントワネットが栄華を極めたヴェルサイユ宮殿の
周辺の森には、現在ではホームレスたちのテントや掘っ立て
小屋が数多く見られるのだそうだ。この映画では、そんな掘
っ立て小屋に住む男の許に置き去りにされた幼い少年を巡る
物語が展開される。
その少年は、最初は母親と共にパリの町を彷徨っていた。そ
してヴェルサイユの収容施設に入所が決まり、2人はその施
設にやってくる。ところが母親は施設に居ることが疎ましい
らしく、翌朝には施設を出てパリ行きの列車の駅を目指そう
とするが…
歩き始めた2人は森で迷い、1軒の掘っ立て小屋の前にたど
り着く。そこには1人の男が暮らしており、男は2人を小屋
に招き居れる。そして1夜を過ごした母親は、男を信用でき
ると思ったのか少年を残して去ってしまう。
こうして始まった男との共同生活ではいろいろな出来事が起
き、やがて男は少年を守るために町に戻ることを決心する。
こんな大人たちの勝手な思惑や行動に、少年は健気に付き随
って行く。
この少年を、パリの学校に通う小学生で、映画出演は初めて
というマックス・ベセット・ド・マルグレーヴが演じて、正
に天使が舞い降りたような、演技かどうかも分からないほど
の見事な仕種や表情を見せてくれる。その健気さは観客には
堪らないものだ。
一方、本作でセザール賞の候補にもなっているドパルデュー
は、2003年以降は右足が義足のはずだが、そんなことは感じ
させない見事な演技を展開している。父親との確執もいろい
ろあった俳優だが、他人の子供への父性を描いた作品で候補
というのも皮肉な話だ。
なお本作は、セザール賞では新人作品賞の候補にも選ばれて
いる。
未曾有の世界不況の中、お先真っ暗な日本でもホームレスは
激増しているのだろう。しかし何かを糧に未来を切り開いて
行こうとする。そんなこの映画の主人公の姿は、どこかに共
感を呼ぶものにもなっている。
01月31日(土)
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