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On the Production
by 井口健二
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■ジェイン・オースティンの読書会、アクエリアンエイジ、あの空をおぼえている、美しすぎる母、フィースト、覆面ダルホ、ひまわり、泪壺
かれる。結局、物語はこのように終らざるを得ないのかも知
れないが、その結末は強い余韻を残してくれるものだ。
基本的にヤクザ映画は好きではないし、日本映画でのそれは
ほとんど見てこなかったが、まったく綺麗事ではなく描かれ
たこの作品には、ある種の崇高な思いが感じられる気もする
ものだった。
共演は、若手注目女優のホ・イジェと、“四季”シリーズの
ベテラン=キム・ヘスク。一昨年公開された韓国では、観客
100万人以上を動員したヒット作だそうだ。
なお本作も、3月に東京と大阪で開催される「韓流シネマフ
ェスティバル2008春」の1本として上映される。
『泪壺』
渡辺淳一の同名の原作を、かつてピンク四天王の1人と呼ば
れた瀬々敬久監督が、小島可奈子、いしだ壱成、佐藤藍子を
主演に迎えて映画化した作品。
瀬々監督作品では、一昨年11月に谷崎潤一郎原作の『刺青』
の映画化を紹介しているが、それ以前にも2本ほど紹介して
きた。基本的にピンク映画の監督ということで、本作でも小
島のかなり大胆な艶技を見ることができる。
物語は、小島と佐藤が扮する姉妹といしだ扮する男性の交流
を描く。男性はある偶然から姉妹と出会い妹と結婚する。し
かし姉も男性に思いを寄せていた。その秘めた思いは妹の死
によって否応なく高まるが、男性は妻への愛情を持ち続けて
いる。
その妻への愛情は、妻の遺灰で白磁の壺を作らせるまでに至
るが、その壺には亡き妻の泪のような傷が生じていた。そし
て男性には別の女性も現れ、姉は発露を見いだせない思いに
さいなまれて行く。ここで小島の艶技となるものだ。
ということで、渡辺作品の映画化では『失楽園』もかくやと
いう展開になるのだが…
実は、僕が本作で注目したのは、原作には描かれていない過
去の物語が織り込まれているところだった。その部分はある
種ファンタスティックでもあり、それなりに良い感じがした
ものだ。脚本は、以前に瀬々監督の『肌の隙間』も手掛けて
いる佐藤有記が担当している。
ところが本作では、その創作された物語と小島の艶技とが、
水と油のように分離しているように感じられた。瀬々作品で
は『刺青』の時もかなり大胆な原作の改変が見られたが、谷
崎原作では元々がそういう話だったから、それはすんなりと
融合していたものだ。
それが渡辺原作でも、『失楽園』のように融合するはずなの
だが、何故か本作ではそれが上手く行っていない。
これは何と言うか、創作された青少年時代の物語が美しく描
かれすぎたためのようにも感じられるが、そればかりになる
と瀬々作品ではなくなってしまうことになるし、これは痛し
痒しというところだ。
いっそのこと、青少年時代のシーンでも一発やってしまって
いれば、それなりに纏まりも着いたとも思うのだが…そこま
で大胆にはできなかったのだろうか。そこはちょっと残念な
気もした。ただし本作では、瀬々監督の別の一面も見られた
ようで、それは面白かった。
02月17日(日)
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