ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460210hit]
■ダンサーの純情、コルシカン・ファイル、ワル、カースド、ミュンヘン、モルタデロとフィレモン、マンダレイ
たということだ。
つまり、法律によって突然に奴隷状態から開放された人たち
が、自分たちのするべきことも判らず、かえって元の奴隷状
態を羨望するようになるという皮肉な現実が、歴史的にも起
きていたということだ。そしてこの映画の物語もそのように
展開して行く。
しかし、本編の物語はそれだけを描いているのではない。そ
こに介入して、アメリカ民主主義を押しつけようとするグレ
ースの行為が、物語の他方の主題となっている。ここでは、
アメリカ政府が中東などで行っている行為があからさまに非
難されているものだ。
この作品に対しては、Variety紙やThe New York Timesなど
が好意的な評価を載せる一方で、The Hollywood Reporterな
どはかなり批判的な文章を掲載したようだ。
実際に僕が見た感想を言えば、この映画で展開されるアメリ
カ批判は即物的に過ぎるし、これでは神経を逆撫でされる人
も多いだろうと思うものだ。しかし、アメリカを始め多くの
映画製作者が口を噤んでいることを敢えて言おうとするなら
ば、これくらいにあからさまにしないことには、その目的は
達成できないということなのだろう。
因に、前作に主演したオーストラリア人のニコール・キッド
マンは役を降板した訳だが、代りに起用されたブライス・ダ
ラス・ハワードが若い分、アメリカの幼さが強調されたのは
上手いやり方のようにも感じられた。
ただし、前作はキッドマンの堂々たる演技と特異なセット環
境で、あえて芸術的と言える作品になっていたが、今回はセ
ットの風景にも慣れてしまったし、かえって戯画化された雰
囲気にもなって、その点では多少物足りなくも感じられた。
でも、今回は言いたいことが別にあったということで、次回
3部作の完結編には改めて期待したいところだ。
01月30日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る