ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■ディア・ウェンディ、ザ・コーポレーション、RIZE、三年身籠る、イントゥ・ザ・サン、変身、NOEL、ポビーとディンガン
地と知られるこの土地には、世界中から一攫千金を狙う人々
が集まり、そこいら中に採掘権を設定して地面を掘りまくっ
ている。アシュモルとケリーアンの兄妹はそんな父と母と一
緒に暮らしている。
しかしそんな生活の中で、周囲と上手く溶け込めないケリー
アンは、ポビーとディンガンというイマジナリーフレンドと
遊ぶようになってしまう。そして、食卓の彼女の食器の左右
には2人分の皿が並ぶようになっている。
そんなある日、近所で母親と子供のパーティがあると知った
父親は、自分は兄とポビーとディンガンを鉱山に連れて行く
と言い、ケリーアンにはパーティに行くように勧める。そこ
には、ケリーアンを架空の友達から独立させようという考え
もあったのだが…
ところが鉱山でちょっとした落盤などがあり、夜遅くに帰宅
した父親と兄に対し、ケリーアンはポビーとディンガンの姿
がないと言い出す。そしてこれが様々な問題を引き起こして
行くことになる。
サン=テグジュペリの『星の王子さま』の中のキツネの言葉
「いちばん大切なものは目に見えない」に準えて、この原作
は21世紀の『星の王子さま』とも呼ばれているようだ。
「見えない架空の友達が行方不明になる」。ある意味究極と
も言える人捜しの物語が展開する。そこには大人の思惑や、
人々の夢見る心なども見事に描き出され、素晴らしい物語と
なって行く。
いや、周囲がこういう少し夢見がちの人々たちだからこそ、
この物語は成立するのかも知れないが、そんな夢見る心が、
ほんの少しだけ自分にも分けてもらえるような、そんな気持
ちにもさせてもらえる作品だった。

10月30日(日)
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