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On the Production
by 井口健二
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■未完成の映画、テルマがゆく!、OKAは手ぶらでやってくる、WE LIVE IN TIMEこの時に生きて、摩文仁、ら・かんぱねら
骨の戻らなかった沖縄住民の遺族が数多く訪れている。そん
な沖縄の風景が描かれた作品だ。
映画には慰霊碑の前で花を売る大家初子、元沖縄県知事の大
田昌秀、旧軍人の近藤一、ひめゆり同窓生の翁長安子、牛島
司令官の孫の牛島貞満、住民を守れと打電して自決した太田
海軍司令官の孫の太田聡らの各氏が登場して想いを語る。
沖縄戦を扱ったドキュメンタリーもいろいろと見てきている
が、観る度いろいろな側面が見られるのも問題の深さを感じ
てしまうところだ。その問題が現代にも尾を引いていること
も忘れてはいけない。
そんなことも思い知らされる作品だった。
公開は6月21日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ
フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ユーラシアビジョンの招待で試
写を観て投稿するものです。
『ら・かんぱねら』
佐賀県有明海の海苔漁師がフランツ・リストのピアノ曲“La
Canpanella”を弾きたいと思い立ち、譜面も読めない素人が
独学でプロのピアニストでも難曲とされる曲の演奏を成し遂
げるまでを描いた実話に基づくとされる作品。
有明海の海苔漁は養殖を行うものだが、毎年抽選で決まる場
所の優劣や海上での日々の作業などが極めて過酷とされる。
主人公はそんな海苔漁を父親と2人でやってきたが、父親が
病で倒れ、負担が主人公に圧し掛かる。
そんな主人公が漁の合間に自宅でうたた寝をしていた時、ふ
と耳にピアノの演奏が聞こえてくる。そして目を開けた主人
公が見たのは、フジコ・ヘミングが演奏する『ラ・カンパネ
ラ』だった。そして主人公は自分も弾きたいと思い立つ。
しかし主人公は譜面も読めない。それでもネットで演奏する
指の動きの映像を見付け、それに合わせて指を動かし、正に
1小節ずつの亀の歩みのような時間を掛けた練習で難曲を克
服して行く。そこには様々な出会いや支援もあった。
出演は伊原剛志、南果歩、不破万作、緒形敦。他に枝元萌、
鹿毛喜季、川崎瑠奈、どぶろっく(江口直人、森慎太郎)、田
中がん。そして大空眞弓らが脇を固めている。
企画、製作、監督は横浜映画放送専門学院(現日本映画大学)
の出身で2003年5月紹介『さよなら、クロ』や2017年12月紹
介『野球部員、演劇の舞台に立つ!』などの製作を手掛けて
きた鈴木一美の監督デビュー作。
脚本は主にテレビでドラマやドキュメンタリーを手掛けてき
た洞澤美恵子が担当している。
このピアノ曲には少し思い出があって、実は自分の娘が幼少
期にエレクトーンを習っていた時の昇級試験の課題曲がこの
曲だった。その時の自分は親としては何もしてやれなかった
のだが、一緒に受験しいた子の親が真剣だった。
その子の課題曲はヘンリー・マンシーニの『ひまわり』で、
何とその親は小学生の娘に映画を見せたというのだ。そんな
幼い子供があの映画を観て何が判るのだろうかというのは疑
問だったが、演奏するのはそういうことだと思わされた。
そこで本作を観ていて、僕には主人公の演奏に対するモチベ
ーションが理解できなかった。それはフジコ・ヘミングの演
奏に感動したからということになっているが、それだけでこ
のモチベーションを保つことは可能だろうか。
もちろん本作は実話に基づいているものだからそうなのだろ
うし、実話の人たちもそう語っているのだろうけど、自分が
観客として理解できなかったことも事実だ。ここにはひょっ
とするともっと別のエピソードがあるのかもしれない。
そんなことも考えてしまう作品だった。
公開は九州などでは既に先行終了しており、東京地区は5月
9日より渋谷のユーロスペースにてロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社コチ・プラン・ピクチャーズの
招待で試写を観て投稿するものです。
04月13日(日)
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