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On the Production
by 井口健二
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■PERFECT DAYS、笑いのカイブツ、私がやりました、マリの話、東京遭難、彼方の閃光
してその辺もしっかりと作り込まれた作品と言えそうだ。ま
た一人気になる監督が出てきた。
公開は11月18日より、東京地区は新宿K'cinema他にて全国順
次ロードショウとなる。
『彼方の閃光』
2022年の東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門で上映され
て話題を呼んだ作品が一般公開されることになり、マスコミ
試写が行われた。なお本作は試写時に情報公開が制限されて
いたため、改めて紹介するものだ。(本項は11月初旬に更新)
主人公は生後すぐに視力を失った少年。そんな少年の拠り所
は音で、彼は周囲の音響や自分の想いをカセットテープに記
録していた。そんな中で彼は「空」というものを知り、高い
ところにあって青い色の「空」に憧れを持つようになる。
そんな少年が青年期になり、視力を回復する手術の機会が訪
れる。そして手術によって視力は回復するのだが、彼に見え
たのは色のないモノクロの世界。「空」の青さは判らないま
まだった。
しかし視力を回復した青年は写真に興味を持つようになり、
2012年に没した東松照明の写真に導かれるように長崎へ。そ
して現地で知り合った男性からドキュメンタリー映画の制作
に誘われ、長崎、沖縄へと戦争の痕跡を辿ることになる。
そこで改めて知る人間の生き様とは…。そんな旅の結末は、
2070年、71歳になった老境の男性へと続いて行く。
原案、脚本、監督はホウ・シャオシェン監督やジャ・ジャン
クー監督作品などの音楽を担当し、自らの監督で2016年11月
5日付第29回東京国際映画祭<コンペティション以外>で紹
介『雨にゆれる女』なども発表している半野喜弘。
出演は2019年3月31日付題名紹介『小さな恋のうた』などの
眞栄田郷敦、2017年7月紹介『アウトレイジ最終章』などの
池内博之、沖縄県出身のラッパー/アーチストのAwich。さら
に尚玄、伊藤正之、加藤雅也らが脇を固めている。
モノクロームで表現される作品はディジタル撮影の時代にも
時折目にするものだが、主人公の心象に合せて表現された本
作の映像は、1971年ダルトン・トランボ監督の『ジョニーは
戦場へ行った』にも匹敵する衝撃を与えてくれた。
正しく作為ではない本物の映像感覚がここには存在している
もの。そんな映像で正に比類のない物語が展開される。それ
は自分の感覚にも近いものがあったもので、ある意味納得の
物語とも言えた。
しかもその主張が、2時間半を超える長尺の中で全くぶれず
に最後まで貫かれるのも素晴らしいと感じられたものだ。
公開は12月8日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国順次ロードショウとなる。
10月01日(日)
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