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On the Production
by 井口健二
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■パンク侍、スペースバグ(若い女、子ども、ブレス、人間機械、スウィンダ、グッバイG、大人のため、妻の愛、榎田、北朝鮮、ゲッベルス)
             “La jeune fille sans mains”
〈2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭で、審査員賞
と最優秀フランス作品賞をW受賞した作品。19世紀初頭に書
かれたグリム童話で初版から収録されている民話「手なしむ
すめ」を、それまで短編作品を手掛けてきた新鋭セバスチャ
ン・ローデンバック監督が、脚本、編集はもとより、全ての
作画も1人で担当して制作した作品。その映像はかなり独特
の風合いのものだ。物語は貧しい生活故に悪魔と取引した父
親のため両手を奪われた少女が、その健気さ故に王子に見初
められるが、そこにも悪魔の魔手が伸びてくる…。グリム童
話は、オリジナルではかなり残酷な描写のあることで知られ
るが、本作はアニメーションで緩和はされているものの、描
かれているものは正に大人のための童話と言える。それはあ
る意味サディスティックでもある。それにしても教訓は「手
はしっかり洗いましょう」なのかな? 公開は8月より、東
京は渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)

『妻の愛、娘の時』“相爱相亲”
(2010年11月1日「第23回東京国際映画祭」で紹介『ブッダ
・マウンテン』などのシルヴィア・チャン脚本、監督、主演
による3代の女性を巡る物語。チャンが演じるのは母親を亡
くしたばかりの中年女性。今際の際の言葉から父親と同じ墓
に入りたいと確信した主人公は、故郷に葬った父の遺骨を町
の墓地に移そうする。ところが故郷の墓は戸籍上の妻と主張
する女性によって頑なに守られていた。これにさらにテレビ
局に勤める主人公の娘も加わって、妻の立場、娘の立場の物
語が展開する。共演は「未体験ゾーンの映画たち2018」で上
映された『ミッション:アンダーカバー』などのラン・ユェ
ティンと、2007年8月紹介『呉清源』(チャン出演)などの
監督のティエン・チュアンチュアン。自分の人生に直接関っ
てくるような話ではないけれど、家族の意味を改めて考えた
くなる作品だ。公開は9月上旬より、東京はYEBISU GARDEN
CINNEMA他にて全国順次ロードショウ。)

『榎田貿易堂』
(『パンク侍』にも出演の渋川清彦主演で、俳優の出身地で
ある群馬県渋川市を舞台に、同郷の飯塚健監督と共に描いた
ヒューマンコメディ。主人公は自宅を使って「なんとなく勘
で」リサイクルショップを開いた男。ところがそれが思いの
外の好調で、従業員を2人雇うまでになっている。とは言う
ものの根がいい加減な主人公は、いろいろトラブルを引き起
す。しかしそれらが話題を呼んで店は益々繁盛してしまう。
そんな適当な物語が渋川のひょうひょうとした演技で描かれ
て行く。共演は、2017年9月3日題名紹介『地の塩』などの
森岡龍、2017年4月23日題名紹介『獣道』などの伊藤沙莉。
他に滝藤賢一、根岸季衣、諏訪太朗、余貴美子らが脇を固め
ている。ロケ地は渋川市だけでなく、伊香保温泉など見事な
ご当地映画にもなっている。公開は6月9日より東京は新宿
武蔵野館で上映の後、16日からはシネマテークたかさき他で
全国ロードショウ。)

『北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ』
                  “Liberation Day”
(2012年5月紹介『アイアン・スカイ』の音楽を担当したこ
とでも知られる旧ユーゴスラビア出身の実験音楽バンドが、
2015年8月15日の北朝鮮・祖国解放70周年記念日に、外国の
バンドとしては初めて同国内での演奏に招聘され、公演を行
うまでの顛末を描いたドキュメンタリー。バンドはナチの軍
服に似せたコスチュームや政治的な歌詞などでいろいろ物議
を醸してきたようだが、上記の映画に参加したことでも判る
ようにナチスを賛美している訳ではない。そんなバンドが何
故北朝鮮に招かれたかにも興味は湧くが、本作ではそんなと
ころを突けるものでもなく、どちらかというと定番の体制の
違いによる意思疎通の難しさなどが面白く描かれている。た
だしこの辺は、2006年7月紹介『ディア・ピョンヤン』など

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06月03日(日)
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