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On the Production
by 井口健二
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■恋する輪廻、逃走車、天使の分け前、ひかりのおと、ダーク・タイド、ブラインドマン+DVDマガジン記者会見、ナンバーテンブルース追記
ベリーはシュノーケルだけのダイヴィングでホホジロザメと
一緒に泳ぐシーンもあり、それは見事な映像になっている。
実際にサメは特別な状況にない限り人間を襲うことは少ない
のだそうで、そんなサメの魅力にも溢れた作品だ。
それにしても今回は、先に紹介した『逃走車』も南アフリカ
共和国が舞台だし、昨年12月紹介『ジャッジ・ドレッド』も
撮影は同国で行われていた。元々がイギリス連邦の構成国で
英語が公用語の一つでもあるこの国は、ハリウッド映画の新
たな製作拠点の一つにもなりそうな勢いだ。

『ブラインドマン その調律は暗殺の調べ』“À l'aveugle”
『トランスポーター』や『96時間』などハリウッド的アク
ション映画は発表しているリュック・ベッソン主宰ヨーロッ
パ・コープが、フランス映画伝統のフィルムノアールに挑戦
した作品。
主人公は妻を事故で失った刑事。以来捜査に没頭する日々だ
が、人生で何かを見失っている感が否めない。そんな彼の前
にパリの高級マンションの一室で若い女性がバラバラ死体で
発見された事件が回ってくる。そこには侵入された形跡もな
く、目撃者もいなかった。
この事件に警察は被害者の元恋人を洗い始めるが、主人公は
数日前に被害者宅のピアノを調律した盲目の調律師に疑いの
目を向ける。そして第2の事件が起きる。それは富豪が爆殺
されたもので、2つの事件は手口も異なり、繋がりも見付か
らなかったが…
単独でも捜査を続ける主人公は、やがて調律師の経歴がすり
替えられていた事実に辿り着く。しかしその頃から主人公の
捜査に圧力が掛かり始める。それは主人公に、自分もある種
の盲目であったことを気付かせる。
出演は、2005年12月紹介『美しき運命の傷痕』などのジャッ
ク・ガンプランと、2011年1月紹介『神々と男たち』などの
ランベール・ウィルスン。他に、2011年3月紹介『黄色い星
の子供たち』に出演のラファエル・アゴゲらが脇を固めてい
る。
監督は、2008年10月紹介『アイズ』でハリウッドにも進出し
ているザヴィエ・パリュ。脚本はベッソンと、2009年にヴィ
ン・ディーゼル、ミシェル・ヨー、ランベール・ウィルスン
らが出演した『バビロンA.D.』のエリック・ベナール。
ベッソンは以前の作品と同様に、製作と原案、共同脚本を手
掛けているが、フィルムノアールの割には背景などにも巨大
な陰謀が暴かれて行く作品だ。それにアクションも多少派手
な感じで、その辺が今回ベッソン的ノアールと称される部分
にもなっている。
まあそれは良し悪しだし、それはこの作品として楽しめるも
のにはなっている。文句を付けたい人はいろいろいるとは思
うが。ただ、背景を大きくしてしまった分、この結末だけで
いいの?という感じもして、その辺が多少気にはなった。映
画としてはこれでいいのだろうけど。
        *         *
 今回は休日があったり、風邪で試写を逃したりしてページ
が余ったので、最後に少し記者会見の模様などを紹介させて
もらう。
 まずは1月8日に創刊された「山田洋次DVDマガジン」
の記者会見が行われた。なおこの会見では、創刊号の『幸福
の黄色いハンカチ』のDVDが配布されたが、映画の紹介は
2010年2月に行っているのでここでは割愛する。
 その会見には、山田監督と作品で日本アカデミー賞助演賞
を受賞した武田鉄矢が出席したが、その中で武田の「この作
品は、役者としての自分のスタートの白線だったが、今では
ゴールの白線でもある。常にこの作品を思い出して自分の進
む道を考えている」という発言はうまいと思った。
 また武田は、「各シーンごとに監督に言われた言葉を思い
出す」のだそうで、例示されたその言葉はかなり含蓄やユー
モアもあり、出来たらその言葉をオーディオコメンタリーで
収録して欲しかったとも思ったところだ。
 その一方で山田監督からは最後に、「世の中がきな臭くな
っているが、映画ではもっと人間を大事にした作品を作って

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01月20日(日)
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