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On the Production
by 井口健二
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■東ベルリンから来た女、髑髏城の七人、ブラッド・ウェポン、R2B、スカイフォール、フランケンウィ二ー、青木ケ原+Star Wars/Oscar anim
孤独な性格がちょっと心配だ。
そんなある日、父の勧めで野球に参加したヴィクターは強豪
投手からホームランを打つ。ところがその打球を追って道に
飛び出したスパーキーが…。その衝撃から立ち直れないヴィ
クターは科学の授業をヒントにある嵐の夜、禁断の実験を試
みる。その実験は見事な成果をもたらすが。
物語は、かなり完璧に「フランケンシュタイン」をトレース
したもので、その物語が少年を主人公に巧みに語られる。た
だしモンスターは犬だが、その無邪気さが原作のモンスター
の無垢な心とも呼応して、原作の素晴らしさが見事に再現さ
れてもいるものだ。
また、そこにはバートン監督の自伝的な要素も含まれている
とのことで、内向的な少年の夢物語が、素晴らしい愛情に彩
られて見事に描かれている。さらにそこには、バートン監督
が観続けてきたいろいろな映画へのオマージュも一杯に込め
られていたようだ。
原案と製作もバートン監督が務めるが、脚本には今年5月紹
介『ダーク・シャドウ』などバートン監督と長年の盟友で、
2000年『チャーリーズ・エンジェル』なども手掛けたジョン
・オーガストが起用されている。でも基本はバートン監督の
思いが描かれているものだろう。
なお、日本公開では吹替版も上映されるが、オリジナル版の
声優は共に子役で、2007年12月紹介『アイ・アム・レジェン
ド』などのチャーリー・ターハンと、2008年7月紹介『ハン
コック』などのアッティカス・シェイファー。
他に、バートン監督とは1990年『シザーハンズ』以来となる
ウィノナ・ライダー、1994年の『エド・ウッド』でオスカー
受賞のマーティン・ランドー、1993年『ナイトメア・ビフォ
ア・クリスマス』などのキャサリン・オハラ、1996年『マー
ズ・アタック』などのマーティン・ショート。
またクリストファー・リーが、主人公が観ている映画に登場
していた。

『青木ケ原』
石原慎太郎企画・原作による富士山麓の青木ケ原樹海を舞台
にした作品。
主人公は、山麓でペンションを営む男性。元は刑事で現在は
町議も務めている身だが、毎年樹海で行われる遺体の一斉搜
索には必ず参加しているようだ。そして今回は、その前日に
行きつけのバーで知り合った男も同行していた。
そして始まった一斉捜索では次々に遺体が発見され、そんな
中でふと脇道に逸れた男の跡を追った主人公は、岩陰に倒れ
たその男の遺体を発見する。それは死んでから何年か経って
いるものだった。
こうして幽霊にまでなって自分の死に場所を知らせた男に、
多少の違和感は持ちながらも供養した思う主人公だったが、
その後も男の幽霊は度々彼の前に現れ続ける。その姿に何か
あると感じた主人公は調査を始めるが…。
出演は、勝野洋、前田亜季、矢柴俊博。他に、ガレッジセー
ル・ゴリ、二木てるみ、左とん平、津川雅彦らが脇を固めて
いる。脚本・監督は、石原とは1997年の『秘祭』、2007年の
『俺は、君のためにこそ死ににゆく』でも組んでいる新城卓
が担当。
東京都民として石原都知事の行政にはいささか辟易している
ところもあるし、2007年の作品は最初から観る気も起こらな
かったものだが、本作は先の第25回東京国際映画祭の特別招
待作品で、幽霊話という情報もあって観ようと思った。
その内容は題名から類推されるように、僕の嫌いなテーマで
はあったが、作品はそれを巧みにサスペンスに昇華させ、さ
らに男女の純愛にすり替えて行く辺りは、さすがと言えるも
のになっていた。
ただまあ、テーマが多少綺麗事のように描かれているのは、
「現代に問い掛ける」とする制作意図とどうなの? という
疑問も感じたが、そのテーマが前面には押し出されていなか
ったし、この程度は仕方ないものかもしれない。
一方、演技者では勝野の捜査ぶりには、昔の姿も彷彿とさせ
て、ニヤリとしてしまうところ。またゴリが途中で行う縦笛
の演奏には、思わず聞き惚れてしまった。指運びもしっかり
として吹き替えには見えなかったが、これは意外な才能か。

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11月04日(日)
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