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On the Production
by 井口健二
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■スケッチ・オブ・ミヤーク、推理作家ポー、くろねこルーシー、火祭り、カハーニー、シャドー・チェイサー、みんなで一緒に、菖蒲、大奥2
『デンジャラス・ラン』などのトレヴァー・メイシーとマー
ク・D・エヴァンスが担当している。
物語は、かなり荒唐無稽ではあるのだけれど、結構細かいと
ころにまで気が使われていて、それは丁寧に作られた作品だ
った。また結末は今のアメリカ映画にしては大胆で、どちら
かというとヨーロッパ映画の雰囲気になっている。
因に映画の国籍は、データベースではアメリカ=スペインの
合作となっているが、公開はヨーロッパが先行で、アメリカ
では9月7日から限定公開と告知されている。そうした方が
良いかなと思わせる面もある作品だ。
そして映画は、マドリードの太陽の門やラス・ベンタス闘牛
場、マイヨール広場、さらにバレンシア州の海岸や港町など
美しいスペインの風景も楽しめる作品にもなっている。

『みんなで一緒に暮らしたら』
“Et si on vivait tous ensemble?”
ジェーン・フォンダ、ジェラルディン・チャップリンの共演
で、老境を迎えた男女の姿を描いた作品。
登場するのはアルベールとジャンヌ、ジャンとアニーの2組
の夫婦と1人者のクロード。5人は40年来の友人同士で、そ
んな彼らがアニー夫妻の家に、クロードの75歳の誕生祝いに
集まっている。
そして彼らはワインなどで乾杯するのだが、一抹の不安は最
近クロードが心臓発作で倒れたことだ。そのクロードは無類
の女好きで、そんな行動を心配する息子は父親を老人ホーム
に入れることを画策している。
一方、ジャンヌは病院での検査結果から自分の余命が短いこ
とを知るが、最近痴呆気味の夫アルベールには、検査結果は
問題なかったと答えてしまう。またジャンは、長年続けてき
たNPOの活動を高齢を理由に断られたと憤っていた。
そしてクロードが若い女性とのデート中に倒れ、息子に老人
ホームに入れられてしまう。それを見舞った友人たちは、彼
を脱走させ、アニー夫妻の家で共同生活を始めることにする
が…。そこには思い掛け無い落とし穴も待っていた。
1972年『コールガール』と1978年『帰郷』で2度のオスカー
主演女優賞に輝くフォンダは、1972年『万事快調』以来のフ
ランス映画出演だそうだが、その前には当時夫だったロジェ
・ヴァディム監督の1968年作品『バーバレラ』にも主演して
いたものだ。
またチャップリンは、最近では2006年2月紹介『ブラッドレ
イン』や2010年2月紹介『ウルフマン』などにも出演してい
たが、2008年9月紹介『永遠の子供たち』ではスペイン俳優
組合賞を受賞したそうだ。
他には、2009年7月紹介『幸せはシャンソニア劇場から』な
どのピエール・リシャール、2003年10月紹介『ミッション・
クレオパトラ』などのクロード・リッシュ、2009年2月紹介
『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』などのギイ・ドブス、
それに今年7月紹介『セブン・デイズ・イン・ハバナ』など
のダニエル・ブリュールらが共演している。
自分もそういう年代に差し掛かってきて、老いを迎えること
の難しさはだんだん身近にも迫ってきている。恐らく映画に
も、これからこういう作品は増えてくるのだろうが、映画で
それを学ばせて貰えるのも有難いことだ。

『菖蒲』“Tatarak”
ポーランドの名匠アンジェイ・ワイダ監督による2009年の作
品。「尼僧ヨアンナ」の原作者ヤロスワフ・イヴァシュキェ
ヴィッチの短編に基づく本作は、2011年ベルリン国際映画祭
での受賞も果たしている。
映画は3重の構造を持っている。その1つ目はプロローグに
もなっている女優クリスティナ・ヤングのモノローグ。2つ
目は短編小説「菖蒲」を映画化したドラマの部分。3つ目は
そのドラマの撮影風景。そして映画では、表裏となる人の生
と死を見つめた物語が描き尽くされる。
原作に基づくドラマは、ポーランドの小さな町での物語。主
人公はその町で開業する医師の妻。最近妻の体調が優れない
ことを心配した医師は自ら妻を診察し、その余命が短いこと
を知る。しかし医師はそのことを妻に告げられない。
そんな彼女は船着場のカフェで1人の青年に目を惹かれる。

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09月02日(日)
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