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On the Production
by 井口健二
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■日輪の遺産、酔拳、チョン・ウチ、ヤバい経済学、エッセンシャル・キリング、デンデラ、POTC生命の泉+Terminator
しかし今回、作品を見直していて物語としてもなかなか巧み
に感じられたものだ。もちろんそれは偶然が支配している面
は強いが、民俗や宗教などが巧みにあしらわれることで、崇
高な男の生き様のような観え方もしてきた。
脚本と監督は、2009年7月紹介『アンナと過ごした4日間』
などのポーランドの名匠イエジー・スコリモフスキ。前作も
会話の少ない作品だったが、本作ではさらにそれが究極に至
っている感じのものだ。
主演はヴィンセント・ギャロ。アメリカの俳優だが両親はシ
チリア移民とのことで、風貌なども本作にはピッタリの感じ
だ。共演は2007年11月紹介『潜水服は蝶の夢を見る』などの
エマニュエル・セニエ。
なお、映画に登場しているCIAの対テロ収容施設は、ヨー
ロッパに実在するとされるが公式には一切認知されていない
もの。またポーランド政府は、CIA機の発着も一切感知し
ていないとするが、欧州議会では周知の事実だそうだ。
『デンデラ』
2001年のメフィスト賞受賞作家で、2007年の三島由紀夫賞を
史上最年少で受賞したという佐藤友哉が、2009年に発表した
小説の映画化。
各地に残る姥捨て伝説を基に、山に捨てられた老婆たちのそ
の後を描いた物語。
主人公のカユは71歳になった日に雪深い山の祠の前に置き去
りにされる。そして極楽浄土に行けると目を瞑るが、ふと気
が付くとカユは小屋の中で藁に包まれていた。
そこは山の祠のさらに奥の村人も足を踏み入れない土地で、
そこに今年で100歳になるメイが、山に捨てられてから30年
掛けて作り上げてきた老婆だけの社会が成り立っていた。そ
れは貧しくも平等な社会。そんな老婆たちの社会にカユも迎
えられたのだ。
そのメイは30年前に山に捨てられた恨みを忘れず、いつの日
か村に復讐することを願っていた。そこにやってきたカユは
丁度50人目の参加者となり、メイは村への復讐に必要な人数
は揃ったと考え作戦を練り始める。そこには復讐に反対する
グループも存在したが。
姥捨てが実際に行われていたという歴史的な記録は残されて
いないそうだが、老人の持つ知恵を大事にしようという教え
がこのような伝説の根底にはあるようだ。本作の老婆たちが
雪山で生き延びているのもそんな知恵のお陰ということなの
だろう。そしてそこから新たな物語が紡ぎ出されて行く。
出演は、浅丘ルリ子、草笛光子、倍賞美津子、山本陽子、山
口果林、白川和子、山口美也子、角替和枝、田根楽子、赤座
美代子。何とも錚々たる女優陣という感じだが、この女優た
ちがボロを身に纏い、顔は老人の特殊メイクで大熱演を繰り
広げている。
脚本と監督は、映画監督今村昌平の長男で2006年『暗いとこ
ろで待ち合わせ』などの天願大介。『暗いところで…』も乙
一原作のファンタスティックな部分のある作品だったが、本
作もある種のユートピア物のようなファンタシーの香りがす
る物語だ。
しかしその物語を天願監督は、山形県庄内映画村に降り積も
る現実の雪と女優陣のリアルな演技で、かなり骨太な作品に
仕上げている。これが1980年生まれの原作者に対する1959年
生まれの監督からの回答なのかもしれない。これは見事な映
画化と言えるものだ。
『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉』
“Pirates of the Caribbearn: On Stranger Tides”
ディズニーランドの人気アトラクションから誕生した2003年
〜2007年公開シリーズの第4弾。といっても前の3作は3部
作として完結しており、本作からはジャック・スパロー船長
の新たな冒険が始まるものだ。
物語の発端はスペイン。永遠の命をもたらすとされる“生命
の泉”を探す途上で命を落とした探検家ポンセ・デ・レオン
の残した200年前の航海日誌が発見され、スペイン国王はそ
の伝説の泉を探すべく海軍の派遣を命じる。
一方、イギリスのロンドンでは、スパローの名で裁判に掛け
られ、絞首刑を言い渡されそうになっていた昔の仲間ギブス
を、スパローが策略によって裁判所から救出する。が、詰め
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05月15日(日)
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