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On the Production
by 井口健二
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■蜂蜜、処刑剣、愛の勝利を、プッチーニの愛人、マイ・バック・ページ、4月の涙、黄色い星の子供たち+ニュース
『ちょんまげぷりん』などの忽那汐里、今年1月紹介『婚前
特急』などの石橋杏奈、2008年10月紹介『悪夢探偵2』など
の韓英恵、2010年9月紹介『大奥』などの中村蒼。さらに長
塚圭史、山内圭哉、古舘寛治、あがた森魚、三浦友和らが脇
を固めている。
監督は、2005年3月紹介『リンダ・リンダ・リンダ』などの
山下敦弘、脚本は『リンダ…』と、2009年2月紹介の『ニセ
札』なども手掛けた向井康介が担当している。
主演の2人のせいか試写会には若い女性の姿も多く見られた
が、日本の若者が一番活力を持っていた頃を描いたこの作品
を、本来の観客であるべき僕と同世代の人がどのくらい観て
くれるか。それが一般公開での勝負になりそうだ。
それにしても、あの時代をもっといろいろな形で映画にして
欲しいものだ。

『4月の涙』“Käsky”
1918年1月27日−5月15日に起きたフィンランド内戦を背景
とした作品。
この当時のフィンランドは、旧宗主国だったロシアに対する
独立運動がロシア革命の勃発で現実のものとなったが、元々
階級闘争の側面もあった運動は、ブルジョア勢力が白衛軍、
労働者階級が赤衛軍という自警組織を創設し、そのまま内戦
へと進んでしまう。
そして白衛軍はドイツ軍の支援を受け、赤衛軍はロシア赤軍
からの武器供与を受けてその戦闘は激しさを増していくが、
元々赤衛軍兵士の練度は低く、約5カ月後に白衛軍の勝利宣
言で内戦は終結したとのことだ。
そんな時代の物語。主人公の一方は赤衛軍に属する女部隊の
女性リーダー、他方は白衛軍の男性兵士。その女性リーダー
が白衛軍の捕虜となり、男性兵士は彼女を判事のいる軍事裁
判所に護送しようとするのだが、その2人に数奇な運命が襲
いかかる。
そこには内戦であるが故の悲劇や女性であることによる過酷
な運命、また元の院長がトルストイ主義者だったという精神
病院に設けられた軍事裁判所のちょっと奇妙な雰囲気や未来
への希望など、様々な要素が描かれて行く。
原作は、フィンランドで最も知られた作家の1人と言われる
レーナ・ランデルの小説によるもので、この原作は2003年の
出版当時に優れたノンフィクション文学に与えられるフィン
ランディア賞の候補にも挙げられたとのことだ。
そして監督のアク・ロウヒミエスは、原作の出版以前からこ
の物語に着目していたが、その後の監督作品で数多くの受賞
を果たすなどの名声を得て、正に満を持しての映画化に踏み
切ったという。
このため本作の製作には、本国のフィンランドだけでなく、
ギリシャやドイツからも資金提供が為されているそうだ。
出演は、本作で2009年ベルリン映画祭シューティングスター
賞を受賞したというサムリ・ヴァウラモと、翌年の同じ賞を
受賞するピヒラ・ビターラ、さらに本作でマラケシュ映画祭
の主演男優賞を受賞したエーロ・アホ。
因にヴァウラモは、日本では今月末から試写がスタートする
ジョージ・クルーニー主演『ラスト・ターゲット』にも出演
しているとのことだ。

『黄色い星の子供たち』“La rafle”
1942年7月16日にフランスのパリで始まった悲劇を描いた作
品。
題名を観ただけで内容が判ってしまう人もいるかも知れない
が、黄色い星とは1942年6月にナチスがその占領下のユダヤ
人に強制したワッペンのこと。それはユダヤ人であることを
識別して迫害を行うためのものだが、悲劇はそれだけでは済
まなかった。
ヴェル・ディヴ(冬期競輪場)。その日、その場所に連行さ
れた1万3000人とも言われる老若男女のユダヤ人は、5日間
を食料も飲料水もトイレも無く閉じ込められた後、さらに強
制収容所へと運ばれて行ったのだ。そしてその先に待ってい
たものは…
このヴェル・ディヴの状況に関しては、昨年10月24日付の東
京国際映画祭<コンペティション部門>で紹介した『サラの
鍵』でも描かれていたが、1995年シラク大統領が公式に謝罪
するまでフランス政府もその事実を認めていなかったという
出来事。それがようやく映画でも描かれるようになってきた

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03月27日(日)
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