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On the Production
by 井口健二
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■白いリボン、クロッシング、ストーン、海炭市叙景、うまれる、フード・インク、美女と野獣3D+他
子供のこと、さらには出産時の痛みなども強調され過ぎてお
り、いたずらに出産の恐怖心を煽るような気がして、その辺
が気になった。
これは『弦牝』の紹介の時にも書いたが、僕はラマーズ法を
勉強し妻の出産に立ち会った経験者として、妻が本作の妊婦
ほど痛がった記憶がない。それに作中で腹式呼吸をするとい
う発言も胸式呼吸で痛みを散らすとしたラマーズの教えと異
なるものだった。
また本作にも『弦牝』と同じ産科医が登場してコメントを述
べているが、この人の提唱する伝統的出産というのが、「痛
くなければお産じゃない」という古来の因習に捉らわれてい
る感じがするし、さらに病院出産をあえて否定するような論
調も気になった。
正直なところは、もっと普通な子供の誕生を喜ぶ作品を観た
かった。でもそれでは商品としての映画にならなかったのか
な。平凡の中にこそ最高のドラマが潜んでいるような気もす
るのだが。
『フード・インク』“Food, Inc.”
2006年にリチャード・リンクレーター監督が映画化した『フ
ァーストフード・ネイション』の基になったドキュメントを
発表したエリック・シュローサーが共同プロデューサーを務
めるドキュメンタリー。
前作もシュローサーが製作にタッチしているが、その作品は
ドキュメンタリーでは撮影が困難としてドラマ化されたもの
だ。しかし結局それが不満だったのか、今回はその困難な撮
影に挑んでいる。
実は、その前作は、僕も試写は観たがサイトにはアップしな
かったものだ。その時に手元に残した記事を読み返すと、前
作では食の安全性から違法移民まであれもこれも取り込みす
ぎている点が、印象として纏まりがないと感じたようだ。
その点で本作では、内容は食の安全性と、食品企業の横暴に
絞られているからそれなりに纏まりのある作品にはなってい
る。ただそれが、遺伝子組み替えと特許侵害、それに結託す
るアメリカ政府の動きとなると、ちょっと日本人の我々とは
距離が置かれてしまう。
でもまあ日本の食の多くはアメリカに頼っていることを考え
ると、これも日本人が知っておかなければならないこととも
言える。それに風評被害でテレビタレントを訴える何て話に
なると、かなり身近にも感じられるものだ。
さらにアメリカ産大豆の種子の大半が遺伝子組み替え技術に
よっているという事実には、日本で売られている食品に「遺
伝子組み替えの材料は使っていません」と表示されているこ
とにも疑問が生じてきた。
食に関するドキュメンタリーもいろいろ観させてもらってき
たが、僕自身の評価としては2009年4月に紹介した『キング
・コーン』が一番面白かったかな。本作でもコーンに関する
問題も取り上げられるが、そこだけに絞った作品の方が良い
のは当然だろう。
おそらく本作でも、大豆や牛肉、養鶏、養豚などに1つ1つ
テーマを絞っても、それぞれ見応えのある作品になったと思
われるし、本作をプロローグとして、そんな作品を1本ずつ
作ってもらいたい感じもした。
結局、作品に纏まりがないという点では、2006年作品の時と
同じだったような感じだが、その内容ではドキュメンタリー
である分、衝撃的な作品になっていた。
『美女と野獣/ディズニーデジタル3D』
“Beauty and Beast”
1991年に発表されてアニメーション作品としては初(2001年
以降は長編アニメーション賞が創設されたので、事実上の史
上唯一)のアカデミー作品賞候補に挙げられた名作が、2D
−3D変換されて再公開される。
物語は改めて書く必要があるかどうか判らないが、フランス
の伝承民話に基づくもので、傲慢な性格から魔女の不興を買
い野獣に変身させられた王子の前に現れた娘が、最初はその
容姿に驚くものの徐々に愛を育み、真心の愛によって呪いを
解く…というお話。
そして本作の製作では、1985年の『ヤング・シャーロック』
で初めて本格的なCGIアニメーションを手掛けたジョン・
ラセターがディズニーと組み、劇中のクライマックスの一つ
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09月19日(日)
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