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On the Production
by 井口健二
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■サイタマノラッパー2、結び目、氷雪の門、バウンティー・ハンター、アムステルダム国立美術館+製作ニュース
実在していたものだそうだ。

『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』
              “Het Nieuwe Rijksmuseum”
レンブラントの「夜警」などを所蔵するアムステルダム国立
美術館の改築を巡って起きた計画反対運動の模様と、それに
もめげずに改築を進めようとする美術館の前館長の奮闘ぶり
などを描いたドキュメンタリー。
国立美術館の改築は1999年オランダ議会で承認され、2001年
には公募コンペティションでスペイン人の建築デザイナーが
選ばれるなど着々と準備が進められた。そして19世紀に建て
られた元の建物の装飾の調査や解体作業が開始される。
ところが、改築の計画案が発表されると、建物の中央を貫通
している通路での自転車走行の問題や、併せて新築される建
物の景観などに反対意見が提出され、計画評価の公聴会の開
催が求められる。そして公聴会は紛糾し、工事は中断を余儀
なくされてしまう。
しかしその問題も前館長の奮闘などでようやく解決されるの
だが…。今度は計画の遅れの影響などからか工事業者の入札
が不調となってしまう。こうして、またまた工事の中断を余
儀なくされた国立美術館は…
その一方で、改築された新美術館での展示に向けて絵画の修
復や、日本からは新たに金剛力士像が購入されるなど、展示
の準備も着々と進められて行くのだが、設計の変更などでそ
の思惑も外されて行く。
こうした中、美術館のスタッフたちからも諦めて離職する人
が現われる。中でも金剛力士像の購入を進めた東洋美術部門
のスタッフの到着時の輝くような笑顔や、その後の設計変更
に落胆する姿が印象的に紹介される。
オランダの公共施設の建築事情などは良く判らないが、今ま
で通行していた自転車の走行に障害が生じると言うサイクリ
スト協会の意見だけで計画全体が白紙撤回に近い状態にされ
てしまう。何とも民主主義という感じの展開だが、この辺は
監督のウケ・ホーヘンダイクもちょっと皮肉を込めて描いて
いるようだ。
そしてそのホーヘンダイクは、当初はもっと単純に新美術館
の建設を取材する計画が、想いの外の人間ドラマを描くこと
になってしまった。それは監督にとってラッキーと言えたの
かどうか。取材はまだまだ続いているようだ。
因に、現状の計画では新美術館の完成は2013年に予定されて
いるようで、完成したら、特に東洋館の金剛力士像がどのよ
うに飾られているか、観に行きたくなってきた。
        *         *
 今回の製作ニュースは、ビッグなプロジェクトになりそう
なこの話題から。
 限定された空間の中で小数の登場人物のみによって描かれ
るソリッド・シチュエーション・スリラー、その元祖とも呼
ばれるカナダ映画『CUBE』などのヴィセンツォ・ナタリ
監督。現在はH・G・ウェルズ原作『獣人島』の現代版とも
目される新作“Splice”の6月4日全米公開に向けて忙しい
監督が、次回作としてニューウェーブSFの旗手J・G・バ
ラード原作の“High Rise”の準備を進めているのに続き、
さらにサイバー・パンクの旗手ウィリアム・ギブスン原作の
“Neuromancer”を映画化すると発表した。
 まず“High Rise”は、1975年に発表されたバラード7作
目の長編小説で、日本でも1980年に翻訳が出ていたようだ。
内容は、その中にプールや学校からスーパーマーケットまで
設けられ、高速エレベーターでそれらを行き来するだけで生
活のできる超高層ビルに暮らす人々を描いたもの。その中で
の上下階層間での住人の諍いなどがバラードの筆致で描かれ
ている。
 そしてこの作品は、実は70年代の後半にニコラス・ローグ
の監督で映画化が計画されたことがあり、翻訳が早く出され
たのもその影響があったのかも知れない。しかし計画は頓挫
していたものだ。その映画化にナタリ監督が挑んでいるもの
で、現在は自ら脚本を執筆中とも伝えられている。
 一方、“Neuromancer”は1984年にカナダで初出版された
ギブスンの最初の長編作品で、何故か日本の千葉を舞台に近

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05月16日(日)
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