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On the Production
by 井口健二
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■恋するベーカリー、アイガー北壁+製作ニュース
どで巻を追うごとにベストセラーとなったものだ。それは、
ちょうど第4巻が発行された頃にアメリカを旅行していた僕
の目には、書店の店頭に堆く詰まれた本の山とその山が見る
見る消えて行く様子に、唖然とした記憶も残っている。
 その作品の映画化は、初めは1975年頃にチリ出身の映画監
督アレハンドロ・ホドロフスキーによって着手され、SF画
家のクリス・フォス、メビウス、H・R・ギーガー、特撮に
はダン・オバノンらの参加も得て進められたが、約1年間の
準備の後に製作資金の調達の失敗などで、上映時間は10時間
だったとも言われる計画は頓挫してしまった。
 その計画を復活させたのが、1982年の『コナン・ザ・グレ
ート』も手掛けたプロデューサーのディノ・デ=ラウレンテ
ィスで、彼は全てを白紙に戻した上でその監督に『エレファ
ント・マン』が絶賛を浴びていたリンチを起用。カイル・マ
クラクラン、ヴァージニア・マドセン、スティング、マック
ス・フォン・シドー。さらにパトリック・スチュアートらも
共演した作品は1984年12月に全米公開された。
 しかし、公開時に上映時間が短縮されたと言われる作品は
興行的な成功を得られず、その後に長尺版も発表されはした
が、失敗作というレッテルは貼られたままのものだ。因に僕
個人としては、この作品のプロモーションで来日したリンチ
監督らの記者会見でMCをさせて貰ったものだが、この会見
には当時滅多に記者会見に応じないとされていたリンチが登
場するとのことで、海外からも記者が駆け付け、彼らが発す
る深い質問の数々に司会席にいて興奮した記憶も、懐かしい
思い出となっている。
 という作品のリメイクになるが、今回の計画も実は2008年
4月1日付第156回で紹介しているように、すでに2年近く
準備が進められていたもので、当時は『ハンコック』などの
ピーター・バーグ監督の起用が発表され、その時点で脚本家
を選考中となっていた。そしてその脚本家にはジョッシュア
・ゼトマーという人物が選ばれ、すでに脚色は完成されてい
たようなのだが、今度はバーグ監督がボードゲームを題材と
する“Battleship”という作品への参加を表明して降板、改
めて監督の選考が行われていた。
 その監督にモレルの起用が発表されたもので、長編監督は
4作目という実績は多少気になるが、デヴィッド・リンチは
3作目でこの原作に挑戦した訳だし、ピーター・バーグも監
督の実績はさほど無かったから、結局この作品はそういう巡
り合わせになるものなのだろう。
 因に、脚本家のゼトマーも、公式には本作が初脚本となる
ものだが、実は『007慰めの報酬』で撮影現場での脚本の
リライトを担当しており、また彼が執筆した“Villan”とい
う脚本は2006年度の「製作されていない優秀な脚本10本」に
選ばれた後、現在はレオナルド・ディカプリオの製作で映画
化が進められるなどの実績の持ち主ではあるようだ。
 キャスティングなどもまだ決まっていない作品だが、今度
はトラブル無く映画を完成させて欲しいものだ。

01月10日(日)
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