ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460244hit]
■ユキとニナ、フォース・カインド、サロゲート、パレード、Dr.パルナサスの鏡、抱擁のかけら、作戦、バニッシング・ポイント
その若者はある富豪の息子で、その富豪と主人公には因縁が
あった。そして物語は、主人公の身の回りの面倒を見ている
女性マネージャーと、マネージャーの息子の青年も巻き込ん
で、主人公の挫折の原因となった物語を語って行く。
アルモドヴァル監督の作品では、自分の住んでいるのとは違
った世界で、自分の人生ともかけ離れた物語が展開される。
だからその物語は、自分を部外者に置いてゆっくりと楽しむ
ことができるし、お話をお話として堪能できるものだ。
因に本作は、監督が旅行先で何気なく撮った写真に、撮影時
には気付かなかった抱擁する男女が写っていたことから、想
像の翼を拡げて作り出したとのこと。正にフィクションとい
う感じ物語が繰り広げられる。
その物語で主人公の映画監督は、彼の作品に主演した1人の
女性に恋をするのだが、その恋は現在の彼の生活には繋がっ
ていない。その事情が徐々に明らかにされて行くものだ。
出演は、『ボルベール』でオスカー候補になったペネロペ・
クルス、同監督の『バッド・エデュケーション』に出演のル
イス・オマール、『ボルベール』や『アラトリステ』のブラ
ンカ・ポルティージョ。
『ボルベール』の来日記者会見のとき監督は、「ペネロペは
満点に近い素晴らしい女優だが、唯一の欠点はおしりが小さ
いこと。撮影ではパッドを入れさせた」と語っていたが、本
作の彼女の後ろ姿を観ていてそれを思い出した。
先にも書いたように、アルモドヴァル監督の作品は自分の生
活とはかけ離れているから、この作品で涙を流すような感動
が得られるものではないし、見終って「ああそうですか…」
という程度のものだ、でもこれが映画の面白さだし、それを
堪能できる作品だ。
なお本作の劇中では、主人公と青年がヴァンパイア映画の構
想を語るシーンがあったが、それは監督の今後の構想の中に
あるのかな。それから主人公の書斎の棚に並ぶロボットのお
もちゃにも興味を魅かれた。
『作戦 The Scam』“작전”
テレビの『冬のソナタ』にも出演していたパク・ヨンハ主演
で、オンライントレードなど「株」取り引きの現状を描いた
韓国映画初と言われる作品。
株取り引きで全財産を失った主人公は、一度は漢江に架かる
橋にも佇むが…そこから株を勉強し直しデイトレーダーとし
て復活する。そして、とある株の値動きに着目して大儲けす
るのだが、それは元暴力団の経済やくざが仕掛けた「作戦」
を妨害するものだった。
こうしてその経済やくざに目を付けられた主人公は、彼らに
脅されながらその作戦に加担して行くことになる。そこには
過酷な弱肉強食の闘争が待ち構えていた。しかも奴らは、作
戦が終了したら秘密を知る彼を消すことが必至だった。とい
う究極の状況から、主人公が如何に抜け出すかというお話。
この種の経済活動を背景にした映画作品では、1983年のジョ
ン・ランディス監督、ダン・エイクロイド、エディ・マーフ
ィ、ジェイミー・リー・カーティス共演による『大逆転』が
思い出されるが、元々その種の経済活動に興味のない者には
その背景がなかなか判り難いものだ。
それでも、1980年代の話ならそれなりに理解もできたが、最
近のデイトレードの世界となると…。ただし本作で「闇取り
引き」の説明の辺りまでは何とか判ったつもりだったが、最
後の株価の下落の展開は、何故そうなるのか最早ちんぷんか
んぷんだった。
という自分だが、本作は取り敢えず勧善懲悪の話ではあるよ
うだし、最後の場面は株取り引きとは関係なく事件は解決し
ていたようで、その辺は理解もできたし、それなりの満足感
は得られた。
ただまあそこに至るまでの展開が、都合よく大金持ちが現れ
たり、やくざが不必要な殺人を犯してしまったり、正直には
御都合主義な感じもしないではなかった。でも、その辺は僕
が物語の背景をよく理解できていなかったせいもあるのかも
知れない。
共演は、2006年2月紹介『恋の罠』のキム・ミンジョン、今
年5月紹介『セブンデイズ』のパク・ヒスン。まあ人気俳優
[5]続きを読む
11月15日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る