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On the Production
by 井口健二
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■スラムドッグ、イエスマン、ロックンローラ、トワイライト、ビバリーヒルズ・チワワ、アンティーク、レイチェルの結婚、ベルサイユの子
『アンティーク』“서양골동양과자점 앤티크”
日本では、テレビドラマ化やアニメ化もされているよしなが
ふみ原作「西洋骨董洋菓子店」の韓国版映画化。
子供の頃の誘拐事件のトラウマ(?)からケーキを食べられ
ない男性が何故か洋菓子店を開店し、そこにゲイのパティシ
エや元ボクサーの見習い、さらに無器用なウェイターなどが
集まって、新たな誘拐事件に絡むドラマが展開する。
日本での映像化がどうなっていたかは知らないが、今回の韓
国映画では、巻頭に男同士の愛の告白シーンなどゲイが前面
に描かれていて、これがまあ若い女性には受けるのかも知れ
ないが、中年過ぎの小父さんにとっては何かなあという感じ
のものだ。
美形キャラが登場する作品といっても、『カフェ代官山』な
どは、映画の作りが稚拙でもまあ許すのだが、どうもここま
でくると、ゲイを認知しろと迫られてもいるようで、多少そ
の圧迫感に辟易する感じもした。
オカマ文化は別として、日本でゲイがどのくらい受入れられ
ているのか判らないが、でも多分、韓流の美形若手男優がそ
ろっているということでは、日本の韓流ファンにも受けるこ
とが期待される作品なのだろう。
出演は、去年1月に『俺たちの明日』という作品を紹介して
いるユ・アイン(見習い役)以外はテレビドラマの俳優のよ
うで、主人公の店主役には『魔王』などのチュ・ジフン、パ
ティシエ役を『コーヒープリンス1号店』などのキム・ジェ
ウクが演じている。
物語は、過去の誘拐事件や現在の幼児誘拐事件などが適当に
絡まり合って、それなりのものが展開されている。また、い
ろいろ登場する洋菓子も美味しそうなものを見せてもらえる
し、特に若い女性には格好の作品というところだろう。
因に、パティシエを演じるキムとユは、それぞれ数ヶ月の修
業の末、撮影では一切吹き替えを使わずに洋菓子作りの手際
を披露しているようだ。その他、フランス語やダンスなども
レッスンとトレーニングの成果ということで、かなり本格的
に観られるものだ。
若手の俳優を使ってじっくり映画作りをする。これも映画製
作では重要なポイントだ。

『レイチェルの結婚』“Rachel Getting Married”
『羊たちの沈黙』などのジョナサン・デミ監督が、2004年の
“The Manchurian Candidate”(クライシス・オブ・アメリ
カ)以来の劇映画のメガホンを取った作品。
因にこの間のデミ監督は、ハリケーン・カタリーナ以後のニ
ューオーリンズの姿を追ったドキュメンタリーや、ニール・
ヤング、ボブ・マーリーらのミュージシャンを題材にしたド
キュメンタリーを手掛けていたようだ。
そのデミ監督の5年ぶりの作品は、長女の結婚式を2日後に
控えた一家を巡るドラマ。その次女がある施設から帰ってく
るが、彼女の精神状態は穏やかでなく、また過去にもいろい
ろなトラブルがあったようだ。
そして帰宅した次女は、自分が花嫁の第1介添人に選ばれな
かったことから怒り出す。さらに介添人の衣装の色などにも
次々難題を吹っかけるが…その次女は、依存症患者のミーテ
ィングで自分の過去に起きた悲しい出来事を語り出す。
語られる時間軸は一つだが、そこにさまざまな過去の出来事
が甦ってくる。そこには構成上でのトリッキーな要素はない
が、巧みな描き方で徐々に登場人物たちの心情が解き明かさ
れて行く仕組みだ。
恐らくその脚本の巧みさが、デミ監督を動かしたことにもな
るのだろう。その脚本を執筆したのは、名匠シドニー・ルメ
ット監督の娘のジェニー・ルメット。映画化が実現したのは
本作が初めてのようだが、演劇の先生でもあるという彼女の
力量は確かなものだ。
出演は、本作でオスカー主演賞候補にもなっているアン・ハ
サウェイ。他に、ローズマリー・デウィット、デブラ・ウィ
ンガー、バンドTVオン・ザ・レディオのメムバーのトゥン
デ・アデビンペ、中国系の詩人のボー・シアら多彩な顔ぶれ
が共演している。

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01月31日(土)
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