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On the Production
by 井口健二
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■チェンジリング、遭難フリーター、花の生涯:梅蘭芳、連獅子/らくだ、パッセンジャーズ、PVC−1、ザ・クリーナー
・ガルシアが担当した。
『PVC−1[余命85分]』“PVC-1”
かつて世界で最も殺人が多発している国とされたコロンビア
で、反政府軍の仕業とされたダイナマイトネックレス事件。
富裕層の女性が首にダイナマイトを巻かれて脅迫され、多額
の「税金」を要求された事件を参考に、85分ワンカットの映
像で演出された作品。
映画は犯罪者の1団がジープで乗り付け、農場に住む一家を
襲うところから始まる。彼らの1人は慎重にある物を運んで
おり、メジャーで一家の主人と妻の首回りを測ると、妻の首
に運んできた物=塩化ビニール管を繋げた首枷を付け、スイ
ッチを入れる。
その首枷にはダイナマイトが内蔵されており、彼らはそれを
いつでも爆発できると宣告、そして多額の金を要求するのだ
が…
彼らが立ち去ると主人は直ちに行動を起こし、親戚を通じで
警察に事件を報告すると、爆発物処理班と落ち合う場所に向
かって行軍を開始する。それは、山中を行き交うトロッコ列
車に乗ったり、野越え山越えの厳しい行軍だ。
そしてそれを成し遂げた彼らは爆発物処理班と落ち合い、警
察隊や救護隊の見守る中、首枷除去の作業が始まる。しかし
それは予想以上に困難な作業だった。
この物語が全編ワンカットで描かれる。
全編ワンカットの映画というと、2002年11月に紹介した『エ
ルミタージュの幻想』や、昨年の東京国際映画祭で上映され
た『ワルツ』などが話題になったが、実はこの2作とも、途
中で何か所かカットを疑うシーンがあったものだ。
しかし本作は間違いなしのワンカット。ただし今回の上映は
フィルムに変換されていたので、プロジェクターの切り替え
があるのだが、逆にそこは切り替えが目立っても撮影は一連
と判るシーンが選ばれており、他のシーンもカットは不可能
な場面ばかりだった。
その撮影は、脚本、監督のスピロス・スタソロプロスが自分
で行っているものだが、正に1発勝負の撮影を見事に達成し
ている。ただまあちょっと不要なものが写っていたような気
のする場面はあったが、それはご愛嬌。映画全体は見事に完
成されたものだ。
とは言うものの、実は映画は極めて後味の悪い内容、だがこ
れが現実。エンディングで幼い娘の抱えている赤い物が痛々
しいが、その痛々しさが現実の恐怖を見事に訴えている。
『ソウ』はフィクションだが、これはリアルだ。
『ザ・クリーナー』“Cleaner”
2006年11月15日付の第123回で製作ニュースを紹介している
レニー・ハーリン監督、サミュエル・L・ジャクスン主演に
よるサスペンス作品。
殺人現場などの掃除を専門に行うスペシャリストの男性が、
依頼された明らかな殺人現場のクリーニングを行う。しかし
その現場はまだ警察がタッチしていないものだった。さらに
その家の主人と思われる男の失踪事件が報道され、しかも失
踪したのは警察汚職事件の鍵を握るとされる人物。
ジャクスンが演じる主人公は元刑事で、ある事件をきっかけ
に警察を辞めて今の仕事を始めたが、そこにも汚職事件との
関わりはあるようだ。そして彼は、自分にも嫌疑のかかる恐
れのある事件を独自に調査し始めるのだが…
この主人公の調査に協力する元同僚刑事役にエド・ハリス、
主人公が掃除した邸宅の女主人役にエヴァ・メンデスを配し
て見事な犯罪劇が展開される。
レニー・ハーリンというと、『クリフハンガー』や『カット
スロート・アイランド』など、派手なアクション演出が話題
になる監督だが、本作ではそのようなアクション演出は抑え
て、指先の映像で人物の心理状態を表現するなど細かな演出
を展開している。
実はハーリンは、最近ではブライアン・デパルマ監督の『ブ
ラック・ダリア』の製作を担当するなど、監督以外の経歴も
増やしており、その一環として今までとは違った傾向の映画
にも挑戦をしているようだ。そんな監督の新たな面も見せて
くれる作品となっている。
因にこの脚本は、マシュー・オルドリッチという新人脚本家
が執筆したものだが、最初にジャクスンには初監督作品とし
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12月21日(日)
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