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On the Production
by 井口健二
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■カフーを待ちわびて、はじめての家出、天使の目・野獣の街、クジラ、エレジー、年々歳々、いのちの戦場、重力ピエロ
そんな母子の哀しい生活がある要素を加えて淡々と描かれて
行く。
実は、その加えられている要素というのが、父親の存在なの
だが、その姿が主人公以外には見えないものとなっている。
それが彼女の想像の産物なのか、実際の霊魂なのかという辺
りが微妙に描かれている作品だ。
そしてこの存在が、最後には奇跡の展開を描き出すのだが、
さてこの展開が一般の映画ファンの目にはどのように映るこ
とか…。僕は元々ファンタシー系の作品をテリトリーとして
いる人間だから驚くに当たらなかったが、一般の人がこれを
感動としてくれれば嬉しいものだ。
しかし、取りようによってはかなり安易なものではあるし、
逆にその点がマイナス要素になってしまってはもったいない
感じもする。僕としては、もっと別の展開もあるのではない
かという考えも持つものだし、その辺に何かもう一工夫欲し
かった感じもした。
主演の娘役は、「早稲田アカデミー」のCMなどに出ている
江野沢愛美。従姉妹役はドラマ「スクラップティーチャー」
に出演の指出瑞貴。さらに『アキレスと亀』に出演の円城寺
あや、風間トオルらが共演している。
監督は、『リング』『呪怨』の助監督を務め、『エクステ』
の脚本も担当したという安達正軌。ファンタシーは判ってい
る人のように思えるが、他人の脚本の演出とはいえもう1歩
踏み込んで欲しかったところだ。
『いのちの戦場』“L'Ennemi intime”
2002年8月に紹介した『スズメバチ』などのフランス人俳優
ブノア・マジメルが、自らの立案、主演で映画化した1954−
62年のフランス−アルジェリア戦争を描いた作品。
マジメルは1974年生れだそうだから件の戦争は知らない世代
ということになるが、フランス政府が1999年に初めて公式に
認めたという歴史の陰に葬られようとしていた戦争を、ある
種の義憤に燃えて映画化した作品と言えそうだ。
そのマジメルが演じる主人公は、アルジェリアの山岳地帯の
戦場に新たに赴任した志願兵の中尉。
時は1959年7月、その戦場ではゲリラ戦を続ける民族部隊の
フェラガに対する掃討作戦が展開されていた。そのフェラガ
の指揮官を捜索する作戦の最中に前任の中尉が戦死し、その
後任として彼はやってきたのだ。
ところがその戦場では、情報を得るためと称する捕虜の拷問
や民間人への銃撃など、およそ他の戦場では見られない残虐
行為が日常的に行われていた。その現実を目の当りにした主
人公は、直ちにその残虐行為を止めようとするのだが…
フランス−アルジェリア戦争を描いた映画では、僕は1967年
に日本公開されたジッロ・ポンテコルヴォ監督の『アルジェ
の戦い』をその当時に観たものだが、町場でのレジスタンス
の模様と、特に最後の勝利が決まったときのアラブ女性たち
の特有な叫び声が強烈な印象として残っている作品だ。
その映画の中でもフランス兵による残虐行為は描かれていた
とは思うが、アルジェリア−イタリアの合作で製作された作
品では、アルジェリア人の勝利に至る道程が前面描かれてお
り、フランス兵の行為などは添え物でしかなかった。
それが本作では、まずフランス人の目で自らの同胞が犯した
犯罪行為を克明に綴って行く。それは残虐行為だけでなく、
自ら命令が起こした過ちから国際法上の違反行為まで、正に
国家の犯罪を告発しているものだ。
マジメルが何故この映画を作ろうとしたのか、その真意は不
明だが、国家の犯した犯罪を正面から見据えた作品には、そ
れを隠し続けた国家への怒りも感じられるところだ。
なお映画化には、長年フランス−アルジェリア戦争の調査を
続けているドキュメンタリー作家で、同名ドキュメンタリー
作品のテレビ放映では、フランス国内で900万人の視聴者を
獲得したというパトリック・ロットマンが参加。ロットマン
が脚本を執筆し、『スズマバチ』のフローラン=エミリオ・
シリが監督を務めている。
『重力ピエロ』
「春が2階から落ちてきた」という書き出しで始まる伊坂幸
太郎原作の映画化。
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12月14日(日)
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