ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460281hit]

■ラ・ボエーム、ベンジャミン・バトン、GIRLS LOVE、レスキューフォース、ラーメンガール、へばの、うたかた
理工場の創設期からその仕事に関わり、結婚を間近にした恋
人もそこの従業員だ。そして父子家庭の彼女は、父親が新築
する広い家での新生活に期待を寄せていた。
ところが、その婚約者が作業中の事故で体内被爆を受けてし
まう。その被害は軽微で身体にも異状はなかったが、状況の
判る父親は彼との間に子供を儲けることに反対し始める。し
かし孫は抱きたいという父親の希望を聞いた婚約者は、自ら
姿を消してしまう。
そして3年後、主人公は大きな家に父親と2人暮らしを続け
ていたが、ある日、彼が街に舞い戻っているという噂を耳に
する。そしてその噂を頼りに彼を捜しに来た彼女は、とある
風景を眼にしてしまう。
元々彼女の母親は、原子力施設ができるときに兄を連れて出
ていってしまったとか、施設が引き起こす悲劇が綴られる。
それはもちろん風評や根拠の無い噂が元ではあるけれど、現
実にこのようにして街を去った人は多いのだろう。
実は自分の父親が、土地投機に載せられて六ヶ所村に二束三
文の土地を持っていたこともあって、多少気になって観た作
品だった。でも話自体はそういうものとは関係ないし、有り
得る悲劇として観られるものだった。
だた、上記の物語までは良かったのだが、ここからの展開が
ちょっとあまり予想していなかったもので、そこに至る伏線
が有ったのかどうかも判らなくなってしまった。たぶん伏線
はなかったと思うが、余りに唐突な展開には驚いたものだ。
でもまあ、こういうことが言いたくなるのも判るような気は
するし、これがその場所に住む人たちの全員の考えではない
にしても、ある意味ストレスの解消であるなら、外部の人間
としてそれも受け入れなくてはならないものなのだろう。
原子力施設が背景に有る作品としては、タルコフスキー監督
の『ストーカー』が思い浮かぶが、この作品にも同じような
雰囲気が感じられた。

『うたかた』
今週末に東京渋谷で3日間だけ特別上映されるオムニバス作
品のDVDを送ってもらったので紹介する。
作品はそれぞれが20分ほどの、いずれも少女を主人公にした
5編で構成されている。
それは、それぞれがいろいろな状況の中、多感さ故に自分が
疎まれている(かもしれない)と思っている少女たちの物語。
大人の目から見れば何でもないことかもかも知れないが当事
者たちには切実なものだろう。
そしてそれは、大人になってからは決して再び巡り会うこと
のない物語たち。しかもその物語が、全てファンタシーの語
り口で作られていることが、いろいろな思いを掻き立ててく
れる作品になっていた。
最初の作品「忘れな草」は、妹ばかり可愛がられて自分は疎
まれていると思っている少女の物語。彼女の取った行動が重
大な事態を引き起こしてしまうのだが、それは現か幻か、全
てが少女の幻想であったのかもしれない。
5編の中で一番深刻な物語が最初に置かれてるのは、その深
刻さの度合いが一番辛いからなのだろうか。自分は親として
こうあってはならないとも思う話で、特に結末の衝撃も強烈
なものだった。
2編目の「翳る陽の少女」は八百比丘尼伝説をモティーフに
したもので、少女の孤独感が比丘尼の物語にオーヴァラップ
して語られている。
ただし、比丘尼の物語を字幕で提示してしまうのは少し策が
無い感じで、ここはもう少し工夫がほしかった。それに少女
が孤独であることも、もう少し明確にしたほうが良かったよ
うに感じられた。
以上の2編はかなり深刻な物語だったが、3編目からは語り
口がちょっと変化する。
その3編目「撥恋少女」は、美人になりたいと思っている少
女の物語。思い切って入った美容サロンで彼女は特別な化粧
水を分けてもらう。そしてそれを付けた少女には、男が誰も
引き寄せられるようになるのだが…その化粧水にはその他の
効能も付いていた。
少女の願望充足の物語だが、それなりの落ちがコミカルに描
かれていた。
4編目の「満つ雫」は、これも少女の願望充足型の物語。一

[5]続きを読む

12月07日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る