ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460281hit]
■ポチの告白、制服サバイガール、三国志、はじめはコドモだった、かさぶた姫、約束の地、ロルナの祈り
バタの演技は演出としてそれは悪いとは思わないが、話し全
体のオタクっぽさに僕はちょっと引いてしまった。
『約束の地』
avexニュースター・シネマ・コレクションと題するavex製作
による長編作品集の1本。
千葉県九十九里町を舞台に、父親の残した愛馬を再びレース
場に立たせたいと奮闘する若い女性の物語。
主人公の父親は地元の競馬場の厩務員だったが、その競馬場
が廃止されて失職、大学進学を目指す娘のために出稼ぎに向
かった東京で事故に遭ってしまう。そして残された娘は、父
親が残した愛馬と共に叔父の経営する乗馬クラブに居候して
いるが、すでに母親も亡くしていた彼女は周囲に心を閉ざし
ている。
そんな彼女のいる乗馬クラブの近くに、東京から3人家族の
一家が引っ越してくる。一家の幼い息子は喘息持ちで、その
転地療養のためこの地にやってきたのだが、息子は道沿いの
乗馬クラブを発見して大はしゃぎ、一家は早速そこを訪ねて
くる。
しかしそんな一家を疎ましく感じる主人公は、子供にも辛く
当たってしまうのだが、一家の父親は彼女に暖かい目を向け
る。
その父親が転職した町役場には、毎日のように主人公が現れ
ていた。彼女は、競馬場の再開を嘆願していたのだが…それ
は亡き父親が彼女と交わした約束でもあった。
中央競馬はそこそこの収益を挙げているようだが、地方競馬
は若者のギャンブル離れなどもあって赤字の場所も少なくな
く、廃止して跡地の再活用が検討されることも多くなってい
るようだ。従ってこの映画の物語のようなことも、少なから
ず有ることかも知れない。
そんな状況の中で夢を語ることはなかなか難しいものだが、
本作では亡き父親の残した夢という形でそれが設定されてい
る。しかしそれは、ある意味、主人公にとっては負担でもあ
り、いろいろ微妙な部分も含んでしまうものだ。
さらに本作では、次々にいろいろなことが起きて、物語を飾
って行くが、その出来事の多さが、逆にそれぞれのエピソー
ドの底を浅くしてしまっている感は否めない。それが映画全
体も軽い物にしてしまっているようにも思える。結局、監督
は何を描きたかったのか、監督の描きたかったものを、もっ
と明確に追った方が良かったように感じられた。
主演は、CM「午後の紅茶」などの伊藤ゆみ、乗馬はかなり
特訓の成果のようだ。他に、菅田俊、赤星昇一郎らが出てい
た。
『ロルナの祈り』“Le Sileuce de Lorna”
2003年9月に紹介した『息子のまなざし』、2005年9月紹介
の『ある子供』などのダルデンヌ兄弟の監督による最新作。
今年のカンヌ映画祭で脚本賞を受賞し、兄弟の作品は2度の
パルムドールを含む4作連続の主要賞受賞となった。
常に社会問題を作品の根底に置いてきた兄弟が今回選んだ題
材は、偽装結婚による国籍取得。主人公の女性は旧東欧圏の
出身者で、EU圏内での国籍を取得するため、ベルギーで麻
薬中毒の男と偽装結婚をしている。
彼女には、同郷の男性の恋人がいて、2人の夢はベルギーで
カフェを開くこと。ようやく国籍取得の目処も付き、銀行の
融資も受けられることになって夢は実現に向かっている。
ところが、裏の組織の手引きで国籍を取得した彼女には、次
に今度はロシア人男性の国籍を得るための偽装結婚の話が舞
い込む。その報酬は大きいが、そのためには今の麻薬中毒の
男との離婚を早急に成立させる必要が生じる。
その手っ取り早い方法は、麻薬中毒男の死だったが、彼女の
ために麻薬を抜こうとし始めた男の苦しむ姿に、何時しか彼
女は情を移していた。
彼女の出身国はアルバニアという設定になっている。歴史的
には常に他国に占領され、戦後ようやく勝ち取った独立は共
産主義独裁者によって踏みにじられた。そんな国がようやく
自由を得たとき、その国民は海外へと出稼ぎに出発したが、
その道も不況によって閉ざされ始めている。そんな現実がこ
の物語の背景には有るようだ。
日本でも、就労のための偽装結婚の話は報道で耳にするが、
[5]続きを読む
11月30日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る