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On the Production
by 井口健二
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■ジェイン・オースティンの読書会、アクエリアンエイジ、あの空をおぼえている、美しすぎる母、フィースト、覆面ダルホ、ひまわり、泪壺
アメリカでは2006年9月に公開されたこの作品は、各地の映
画祭などでも評判を呼び、すでに続篇2本の製作も進んでい
るようだ。

『覆面ダルホ〜演歌の花道〜』“복면달호”
『猟奇的な彼女』などのチャ・テヒョンが、『僕の、世界の
中心は、君だ』以来2年ぶりに映画に復帰した歌謡コメディ
作品。
仲間と組んだバンドでロックスターを目指し、地方のキャバ
レーで歌っていた主人公のダルホは、彼の声を認めたという
ソウルの芸能プロに呼ばれてやってくる。
ところがそこはトロットと呼ばれる韓国演歌のプロダクショ
ン。しかも、間違って契約を結んでしまったダルホは、猛特
訓によりトロットの魂を植え付けられ、トロット歌手として
デビューすることになる。
しかし、昔の仲間に対する羞恥心や何やかやで、デビューの
ステージに覆面を付けて登場したダルホは、逆にそれが受け
て一気に人気が沸騰。そして覆面歌手ボンピルとしてトロッ
ト界のトップスターとなっていくが…
チャは元々歌手としてもヒット曲を持っているのだそうで、
そんなチャのキャラクターを存分に活かした作品と言えるよ
うだ。と言っても、何か有りそうなお話と思ってネットを検
索したら、本作は1997年公開の日本映画『シャ乱Qの演歌の
花道』の韓国版リメイクとされていた。
実際、製作者のイ・ギョンギュが日本留学中にオリジナル版
を観て惚れ込み、そのリメイクを実現させたというものだそ
うだが、お陰でチャは、『僕の…』に続けて日本映画からの
リメイクに主演することになってしまったようだ。
オリジナルもつんくの主演だったから、歌唱シーンはチャン
としていたと思われるが、本作のチャもロックからトロット
まで見事に歌いこなしている。特にトロットの臭い振りも付
けたステージシーンは、日本の演歌を連想させて理解しやす
くも感じられた。
また、同じ曲をロックとトロットをそれぞれの編曲で聞かせ
て、本当の歌の心を説明するシーンなども判りやすく作られ
ていたものだ。
ただ、この映画の字幕にはトロットという言葉が片仮名でそ
のまま登場するが、果たして日本の観客にこれで通じるもの
かどうか、映画を観ていれば直ぐに理解できるものではある
が、そこはちょっと気になったところだ。
共演は、若手女優のイ・ソヨン。トップ俳優と共演した前作
ではかなり大胆な演技も見せたようだが、本作では清楚な感
じもするちょっと訳ありのトロット歌手を好演している。
なお本作は、3月に東京と大阪で開催される「韓流シネマフ
ェスティバル2008春」の1本として上映される。

『ひまわり』“해바라기”
2006年11月20日付で紹介した『Mr.ソクラテス』などのキム
・レウォン主演による韓流ノワール作品。
刑務所から出所してきた男。その男が肌身離さず持ち歩く小
さなノートには、「2度と酒を飲まないこと、2度と喧嘩を
しないこと、2度と涙を流さないこと」という誓いと共に、
出所したらやりたいことのメモがぎっしりと書かれていた。
男は、とある町のひまわりという名の小さな食堂を訪れ、応
対に出た若い女性に、「昔は向かいに大きなひまわり畑が広
がっていた」と語る。その後、男は町で知り合いを訪ね歩く
が、男の過去は彼らから一目置かれる存在だったらしい。
やがて食堂に戻った男は、そこの女将から養子にと迎えられ
る。最初に応対した若い女性はその女将の娘で、ぶっきらぼ
うな態度はとるが反対ではなさそうだ。そして男の町での生
活が始まるが…
その町では、町の顔役が主導する再開発が進められており、
その地区で買収に応じていない最後の場所が食堂ひまわりだ
った。一方、その顔役の配下では、昔男の手下だった2人の
若者が地位を争っていた。
こうして、2度とヤクザの道に入らないと誓ってきた男は、
否応なしにその世界と対峙する羽目に陥って行く。
何度も映画化されてきたような話ではあるが、本作では後半
の主人公が追い詰められて行く状況が、尋常でなく強烈に描

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02月17日(日)
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