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On the Production
by 井口健二
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■永遠の魂、タクシデルミア、黄金の羅針盤、恋する彼女西へ、トゥヤーの結婚、アメリカン・ホーンティング、結婚しようよ
2007年のベルリン映画祭でグランプリの金熊賞を受賞した作
品。内モンゴルを舞台にある女性の特別な結婚が描かれる。
トゥヤーは内モンゴルの草原で夫と2人の幼い子供と一緒に
暮らしていた。ところが、その夫がダイナマイトの事故で下
半身不随になってしまう。
羊の放牧で暮らしを立てる一家には、水の確保が最重要事項
だったが、乾燥化が進むその土地の井戸は10kmも離れ、駱駝
を引いてそこに水を汲みに行くのがトゥヤーの日課になる。
しかしそれは、女性には過酷な労働だった。
そこで夫は離婚を申し立てトゥヤーに健常な男との再婚を促
すが、トゥヤーは離婚は認めるものの、再婚相手には元の夫
と同居し、その面倒を見ることを条件とする。そして美人の
トゥヤーの許にはいろいろな再婚相手が次々に現れるが…
再婚にこのような条件を付けることが、現地においてどのく
らい非常識なことかは判らないが、元の夫との愛情の板挟み
の中でトゥヤーの苦しみが見事に描かれている。一方、再婚
相手の男たちの事情もいろいろな側面で描かれ、それが中国
の現状を顕してもいる。
そんな社会的な側面も持った物語が、内モンゴル自治区の広
大な荒野(少し前までは草原だったはずだ)を背景に展開さ
れる。それにしても、このような荒野を背景にした作品を何
度見ていることか。映画は、砂漠化の恐ろしさも伝えている
ものだ。
脚本監督は、2000年の『月蝕』で注目を浴びたワン・チュア
ンアン。脚本には、チェン・カイコー監督『さらば、わが愛
/覇王別姫』なども手掛けたルー・ウェイも参加している。
撮影は、ベルリン映画祭で『月蝕』を観て以来、監督の作品
に参加しているドイツ人のルッツ・ラテマイヤーが担当。
トゥヤー役は、監督の全作に主演し、各地の映画祭の主演賞
を受賞しているユー・ナン。今後は、ウォシャウスキー兄弟
監督が日本製アニメの『マッハ Go!Go!Go!』を実写映画化す
る『スピード・レーサー』にも出演しているそうだ。
またその他の夫や隣人の役などには、現地の素人の人たちが
起用されているようだ。それにしても、映画の背景となった
この土地に、緑の草原が復活することはないのだろうか。
『アメリカン・ホーンティング』“An American Haunting”
ドナルド・サザーランド、シシー・スペイセク共演、2005年
製作のオカルトスリラー。
1817−1935年にアメリカのテネシー州アダムスに住むベル一
家を襲ったBell Witchと呼ばれる怪奇現象を題材に、現代的
な解釈も加えてホラー作家のブレント・モナハンが1997年に
発表した長編小説の映画化。
映画の物語の発端は現代。とある家に引っ越してきた母子の
娘が怪奇な悪夢にうなされるようになる。それには屋根裏で
見つかった品物が影響しているようだった。そして心配する
母親はその中から古く変色した書状を発見。それには驚愕の
物語が綴られていた。
1817年、それはベル一家の1人娘ベッツィーがポルターガイ
スト現象に襲われたことから始まる。彼女を襲った現象は、
教会の神父たちの徐霊にも関わらず、その激しさを増して行
く。そしてその矛先は父親にも向き始める。
実話とされる物語は、1894年に刊行された出版物もあるほど
の歴史的なもので、その後も数多くの書物が出版されている
ようだ。因に2002年にも“Bell Witch: The Movie”という
映画化があって、その作品は本作の公開後にDVDでリリー
スされたそうだ。
ただまあ、今回の映画化された物語の解釈がどこから出てき
たものかはよく判らないが、年頃の娘を持つ父親としてはか
なり厳しいもので、その点では現代の部分も含めてちょっと
考えさせられてしまった。最近この手の話が多いのも、時代
なのだろうか。
上記の他の出演者は、ベッツィー役に、2003年の『ピーター
・パン』のウェンディ役でデビューし、最近では『パフュー
ム』のヒロイン役の他、製作中のロバート・E・ハワード原
作“Solomon Kane”にも出演しているレイチェル・ハード=
ウッド。
また、『マスター・アンド・コマンダー』や、レニー・ハー
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01月20日(日)
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