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On the Production
by 井口健二
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■ウォーター・ホース、団塊ボーイズ、クリアネス、君のためなら千回でも、シスターズ、東京少年、NEXT
思う。
脚本、監督は、1997年にカナダで開かれたFant-Asiaという
映画祭の短編部門で第3位に入ったことがあるというダグラ
ス・バック。監督の頭の中を正確に知りたいところだ。
出演は、女性レポーター役に『ゾディアック』で主人公の妻
を演じていたクロエ・ゼヴィニー。院長役に『リーピング』
にも出ていた怪優スティーヴン・レイが扮している。

『東京少年』
昨年末に紹介した夏帆主演の『東京少女』と同じBS−i製
作の作品で、本作は堀北真希が主演する。タイトルも似通っ
ているが、両作の間に物語上の関連性は全くない。
堀北が演じるのは2重人格の少女。幼い頃に両親を同時に亡
くし、その心の支えとして第2の人格が現れた。しかもそれ
は少年で、少女の人格は、少年の人格をペンフレンドだと思
っているが、少年の人格は全てを理解しているようだ。
多重人格ものというと、最近ではダニエル・キイスの諸作で
有名になったが、映画では、1957年製作でジョアン・ウッド
ワードがオスカーに輝いた“The Three Faces of Eve”とい
う作品が名作とされる。
僕はこの映画は見ていないが、たまたま実話に基づくとされ
る原作小説は昔に読んだことがあって、その中で記憶に残っ
たいくつかのシーンが、本作にも描かれていたのには感心し
た。脚本家が、何を基にこの作品を描いたかは判らないが、
その辺は納得したものだ。
しかも描かれた物語は、その2つの人格同士が恋をするとい
うもので、学術的に起こり得るかどうかは別として、この展
開には脱帽した。究極の悲恋物語であることは確かだし、今
までの多重人格ものを超える新たな物語が造り出されたとも
言えそうだ。
脚本は渡辺睦月。テレビドラマの『杉浦千畝物語』なども手
掛けた人のようだが、他には『怪談新耳袋』などというタイ
トルもあって気になった。監督の平野俊一と共に、『ケータ
イ刑事』のスタッフだが、これで新しい境地に進み出したの
かな。
共演は、『夜のピクニック』『キトキト』などの石田卓也。
他に平田満、『Shall we ダンス?』の草村礼子らが脇を固
める。                        
なお、堀北は最近のテレビドラマでも男装の役を演じていた
ようだが、本作は全くの少年の役となるものだ。その演技に
はかなりの注意が払われたと思うが、特に巻頭のシーンでの
見事に少年になり切った演技に感心した。
『東京少年』と『東京少女』どちらも気に入った作品だ。

『NEXT−ネクスト−』“Next”
フィリップ・K・ディックが1954年のif誌に発表した短編小
説“Golden Man”の映画化。
2006年の『スキャナー・ダークリー』に続いて、またまたデ
ィックの映画化が登場した。『スキャナー…』はかなり実験
的な作品だったが、今回はストレートなアクション映画とな
っている。
原作の短編を含む短編集は1992年に翻訳されているようだ。
その原作の舞台は核戦争後の未来、その極限状態となった世
界で2分間だけ先を見ることのできる男が、その能力を駆使
して神になれるか…という物語だ。
しかし、その物語は映画化に当って大幅に改変されている。
映画化の舞台は現代、そしてロシアで盗まれた核弾頭が合衆
国に持ち込まれ、未来を予知できる男がその爆発を阻止でき
るか…というストーリーが展開される。
2分間だけ先を見ることのできる男が、その能力で暴漢のパ
ンチを躱したり、事故を避けたりというシーンは、いろいろ
なパターンを繰り返し検証して行くシーンを順番に描くとい
う演出で、それなりに面白く表現されていた。
特に、女性へのアプローチをいろいろ試みるシーンなどは、
主演のニコラス・ケイジの風貌と相俟ってニヤリとするシー
ンになっている。他にも、隠れた敵を探すシーンでは検証の
パターンごとに主人公が次々分離して行く表現法なども工夫
されたものだ。
ただしそれがディックの世界かと言われると、ちょっと悩む
ところではある。因にこの映画化をデータベースで引くと、

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01月13日(日)
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