ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460295hit]
■タイドランド、ゴーヤーちゃんぷるー、初恋、アローン・イン・ザ・ダーク、迷い婚、恋は足手まとい、ゆれる、春の日のクマは好きですか?
トは、何故か一文無しのプレイボーイのエドワールに恋して
いた。ところがエドワールは金持ちの娘との婚約を決め、そ
の日は婚約式の前に別れ話を伝えに来たのだが、なかなか言
い出せない。
一方、リュセットの家にはギャンブル狂の元夫が子供の養育
費をせびりに来たり、信奉者の新聞記者が自分の書いたル・
フィガロの記事を見せに来たり、自称作家の男が自作の歌を
捧げに来たり、大金持ちの若い男性が花を届けさせたり、千
客万来。
そして、結局、別れ話を出来なかったエドワールはそのまま
婚約式に向かうのだが、その式にリュセットが招かれている
ことを知って…
どたばた喜劇ではないけれど、観客だけが知っているお互い
の秘密を隠し通すためのすったもんだが繰り広げられる。
風刺がある訳でもないし、社会問題を反映している訳でもな
い。作品にどんな意義があるのかと言われると答えはあまり
見つからないが、取り合えず見ている間だけは楽しめる、そ
んな感じの作品だ。上映時間は1時間20分。R−15指定。
19世紀末〜20世紀初頭の作家ジョルジュ・フェドーによる同
名の戯曲の映画化だが、何故か古道具屋で買ったと称する携
帯電話が登場したり、ちょっと奔放な脚色もされている。実
際、男女の関係は、特に女性の立場が原作よりもかなり強め
に描かれているようだ。
監督は、1968年カトリーヌ・ドヌーヴ主演『めざめ』などの
ミシェル・ドヴィル。最近はシリアスな作品の多かった監督
が、久々にコメディに立ち返った作品とされている。
また、べアールは本格的なコメディでの主演は初めてなのだ
そうだが、コケティッシュな彼女の風貌からは、もっとこう
いう作品にも出てもらいたいとも思ったものだ。
『ゆれる』
山間の吊橋で起きた事故(事件)を巡って、信頼し合ってい
たはずの兄弟の心のゆらぎを追った人間ドラマ。主演はオダ
ギリジョーと香川照之。西川美和監督のオリジナル脚本によ
る作品。
主人公は、東京でプロのカメラマンとして成功している。あ
る日、母親の一周忌で故郷に帰った彼は、父親と共に田舎町
で家業を継いでいる兄と再会する。父親に反発して故郷を離
れた彼は、頑固な父親の面倒を押しつけた兄に後ろめたさが
ある。
そんな主人公は、兄が経営するガソリンスタンドに勤める幼
馴染みの女性とも再会し、その夜を共にするが、その関係は
家族には知られていない秘密だった。そしてその翌日、兄弟
とその女性で渓谷に遊びに行ったとき、そこに架かる吊橋で
事故が起こる。
対岸に渡った主人公を追って吊橋を渡ろうとした女性に兄が
追いつき、主人公の見ている前で彼女が橋から転落死したの
だ。それは最初、整備不良の橋が原因の事故として処理され
るが、突然の自供で殺人事件として兄が告発される。
そして主人公は、裁判で兄の無実を証明するため奔走するこ
とになるが…
実際は、主人公は事件の一部始終を見ているのだが、その目
撃した内容は観客の目からも巧妙に隠され、それが徐々に明
かされて行く。その他にも、兄弟間のいろいろな確執が実に
見事に見え隠れして、それが明かされるごとにドラマが変化
して行く。
さらに物語では、主人公の心のゆらぎによって、見ていたは
ずのものがさまざまに変容し、それによって事件の状況も変
化していってしまう。しかもそれを、真実しか写さないカメ
ラが見事に描き出して行く。この巧みさには、久しぶりに映
画の醍醐味を感じた。
兄弟を演じた香川とオダギリは、共にその演技力には定評の
ある俳優だが、この作品に関しては、その演技以上に脚本と
演出のうまさが作品をリードしている。実際、日本映画でこ
れほど知的に構成された作品に出会えるとは思っていなかっ
た。脱帽。
『春の日のクマは好きですか?』(韓国映画)
昨年の3月に紹介した日本映画『リンダ・リンダ・リンダ』
にも出演していたペ・ドゥナが主演するラヴ・コメディ。
主人公は、ちょっと夢見がちな女性。作家の父親に育てられ
[5]続きを読む
04月14日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る