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On the Production
by 井口健二
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■ダンサーの純情、コルシカン・ファイル、ワル、カースド、ミュンヘン、モルタデロとフィレモン、マンダレイ
る部分には、上手い仕掛けが施されるなど、全体的には各方
面からの文句が付け難いように仕組まれている。この辺りは
さすがにハリウッド映画の知恵という感じもした。
政治的な対立を背景にした作品だが、今のところ正式の抗議
はイスラエル側からだけというのは、全体的に上手く納得で
きるように作られているということなのだろう。
重いし、疲れる映画だが、見終えて間違いなく何かが残る作
品だ。
『モルタデロとフィレモン』“Mortadelo y Filemon”
スペインでは知らない人はいないという国民的コミックスの
実写映画化。2003年の本国公開時には、スペイン映画史上最
高の興行成績を達成。スペインのアカデミー賞と言われるゴ
ヤ賞でもVFX部門を始め5部門で受賞を果たしている。
スペインの諜報機関TIAが開発した秘密兵器DDTが盗ま
れ、某独裁国に売り渡されてしまう。その秘密兵器とは、人
のやる気を無くさせる電波を発生し、その兵器が作動すると
半径500m以内の人々のやる気が一定期間失せてしまうという
もの。
この事態にTIAでは、最高の秘密捜査官フレディを呼び寄
せ、DDT奪還を命じるのだが、とある事情から落ちこぼれ
コンビのモルタデロとフィレモンも捜索に乗り出すことにな
る。こうして、フレディに対抗意識を燃やす2人の飛んでも
ない活躍が始まるが…
靴底の電話機なんていう懐かしいものから『インディ・ジョ
ーンズ』に至るまで、とにかく手当り次第のパロディやギャ
グが満載の作品。
と言っても、僕自身の感覚では、スペインに限らず、ヨーロ
ッパ製のパロディ映画というのは、どうも波長が合わないと
言うか、爆笑にならないことが多いもので、この作品も残念
ながらその域を出てはいない。
しかし本作は、それに加えてCGIから屋台崩しまでのVF
Xがかなり頑張っていて、それを見ているうちに何となく填
ってきてしまった。正直に言って、ギャグは泥臭いものや時
代後れに感じるものも多いが、それでも良いやという感じに
させられる。
人気コミックスの映画化と言うことだが、例えば『サザエさ
ん』の実写映画を日本人以外が楽しめるかと言うと決してそ
うでない訳で、その辺がこの手の映画の難しいところだ。で
もまあ、この作品ではVFXは頑張っているし、その意味で
は見所が無い訳ではない。
そんな気持ちで見れば、それなりに後半は笑えるようにもな
ってきた。それに物語自体は意外としっかり作られていて、
パロディ映画と言うと、とかくギャグ優先で物語がいい加減
なことが多いが、本作は結構理に叶った展開になっているの
は良い感じだった。
なお、字幕監修をラーメンズ・小林賢太郎が行っているとい
うことだが、固有名詞などにギャグを施している他は、字幕
自体に変な感じは持たなかった。それと、エンディングの歌
に付けられた語感を日本語に置き換えただけの歌詞にはちょ
っと唸らされた。
『マンダレイ』“Manderlay”
2003年に公開された『ドッグヴィル』に続く、ラース・フォ
ン・トリアー監督によるアメリカ3部作の第2話。
時は1933年、春まだ浅い頃。前作で描かれた山間の町ドッグ
ヴィルを離れたグレースと、彼女の父親率いるギャング団の
一行はディープサウスに現れる。そして、ふと立ち寄った農
場で、今しも黒人男性が鞭打たれようとしている現場を目撃
する。
何とそこでは、70年前に法律で廃止された奴隷制度が、まだ
生き残っていたのだ。
この事態に義侠心を燃やしたグレースは、父親と別れて農場
に留まり、奴隷たちの解放を試みる。折しも農場の女主人が
亡くなり、今際の際にグレースは、女主人がベッドの下に隠
し持っていた「ママの法律」と題された奴隷支配の手引書を
託されるが…
以下、ネタばれあります。
フォン・トリアーはこの映画の脚本を書くに当って、『O嬢
の物語』の刊行の際にフランスの作家が寄稿した序文「奴隷
状態における幸福」を参考にしたという。そこには1938年に
バルバドス島で発生した解放奴隷の暴動について書かれてい
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01月30日(月)
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