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On the Production
by 井口健二
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■マスター&C、殺人の追憶、LovelyR、ビッグ・フィッシュ、ハッピー・F、いつかきっと、ディボース・S、ペイチェック、グッド・ガール
アメリカの裁判の恐ろしさは、いろいろな映画で描かれてき
たが、現場を押さえれば絶対有利なはずの不倫による離婚裁
判を、いろいろな手段で一気にひっくり返すのだから、当事
者でない観客にとってはかなり痛快だ。
と言っても、事例は3つほど登場するが、その手段はかなり
強引で、まあお話という感じ。それより、映画の主眼はクル
ーニーとゼタ=ジョーンズのだまし合いに置かれており、そ
ちらはかなり周到に作られていて面白かった。
特に、裁判シーンでの見るから演技してますという感じのゼ
タ=ジョーンズの演技は見ものだし、全く似合っていないピ
ンクのスーツ姿も見事だった。その脇を、ビリー・ボブ・ソ
ーントンやジョフリー・ラッシュらが、見るからという感じ
で固めているのも笑えた。
とは言っても、やはりコーエン兄弟の作品、毒はかなり強い
し人も死ぬ。でも、昔ほどどぎつい描写がなくなったのは、
兄弟が成長したのか、ハリウッドに飲み込まれたのか。これ
を残念と思う人もいるかも知れないが、僕は気楽に楽しめる
今の方が好きだ。

『ペイチェック 消された記憶』“Paycheck”
フィリップ・K・ディック原作の短編小説の映画化。
映画化の監督はジョン・ウー、そして主演はベン・アフレッ
クとユマ・サーマン。
主人公は、技術の解析に天才的な能力を発揮する男。彼はこ
の能力で、企業が発表した製品に隠された技術を見破り、そ
の模倣品を他の会社に作らせることを可能にしている。しか
しそれは法に触れることであり、彼は巨額の報酬を得る代り
に、その解析を行っている間の記憶をすべて消去することで
秘密を保持する契約を結んでいる。
そんな彼に大きな仕事が舞い込む。そしてその仕事をやり遂
げ、記憶を消去された後に与えられた報酬は…、彼自身が変
更したという19個のがらくたとしか思えない品々。しかもそ
の事実にがく然とする暇もなく、彼は命を狙われ、生き延び
るためにはその品々に隠された謎を解かなければならなくな
る。
物語の発端は、『トータル・リコール』に似ているし、その
後の展開も何となく共通項が多いのはご愛嬌だろう。しかし
ポール・ヴァーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェ
ネッガーの主演で、かなり泥くさい感じだった前の作品に比
べて、ウーとアフレックのコンビはかなり垢抜けている。
謎解きも結構面白く見られたし、アクションも大掛かり、且
つ派手になっている。その点では良くできた作品といえる。
ただ、僕の個人的な嗜好としては、ディックはやはりアクシ
ョンより心理面で見せて欲しい感じを持つ。ウーもその心理
面に引かれてこれに参加したはずなのだが…。
なお、ウーお決まりの白い鳩はちゃんと飛びます。 

『グッド・ガール』“The Good Girl” 
『ブルース・オールマイティ』のジェニファー・アニストン
主演、『ムーンライト・マイル』ジェイク・ギレンホール、
『シカゴ』ジョン・C・ライリーの共演で、30歳の女性の姿
を描いたドラマ。
この3人の共演で、UIP配給作品。しかも女性映画という
売り込みでは、ライトな作品を予想して気軽に見に行ってし
まったのだが、実はこれが大変な作品だった。
田舎町のディスカウントストアに勤める女性が、同じ職場の
若い男にちょっかいを出す。しかしそれが飛んでもない結果
を招いてしまう。ちょっとした切っ掛けで、誰もが陥ってし
まいそうな悲劇。そんなドラマが見事に描かれていた。
大体、映画が始まってすぐのところから、これはハリウッド
のテイストと違うなという感じがした。それくらいに見事に
ハリウッド映画ではない作品。インディペンデント映画って
何?と聞かれたら、これがそうだ言い切れるような作品だっ
た。
しかもこの顔ぶれでそれを行っているのだから、ミゲール・
アテタというこの監督の感覚はすごい。アニストンもギレン
ホールもライリーも他のハリウッド映画で演じているのと同
じような役柄で…、でもそれが少しずつ違ってくるのだ。

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01月31日(土)
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