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On the Production
by 井口健二
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■第54回
カンが1915年に発表した原作を映画化したもので、第1次大
戦直後のイギリスを舞台に、ギリシャ首相暗殺計画のかぎを
握るスパイを殺したと疑われた主人公が、警察とスパイ団の
両方から追い回されるというお話。ヒッチコックの映画化で
は、かなりコメディタッチの演出が行われていた。
そしてこの作品のリメイクは、既に1959年と78年の2回、
いずれもイギリスで行われており、今回は4回目の映画化と
なるものだ。なお製作は、カールトン・メディア・グループ
のカールトン・アメリカで行うが、実はこの会社は、ヒッチ
コックの1935年作品から、59年、78年作品の権利も所有して
おり、つまりは本家本元のリメイクということになる。
またタウンは、今回の計画では脚本と監督も担当すること
になっているが、この作品については、「現在の逃走ものの
作品の全ては、ヒッチコックのこの作品から始まったものと
言って過言ではない。自分の作品もそのように言われるよう
なものにしたい」と抱負を語っているそうだ。
なお、カールトンではこの他に、アイラ・レヴィンの原作
で、1979年に映画化された“The Boys From Brazil”(日本
未公開)と、人類初の有人火星探査を題材にして、1977年に
映画化された“Capricon One”(カプリコン・1)のリメイ
クも計画しているということだ。
* *
後は新しい計画で、
最初にパラマウントから、“The Girl Who Could Fly”と
題されたロアルド・ダール作品スタイルのシナリオを、6桁
($)の契約金で獲得したことが発表された。
このシナリオは、元はロジャー・コーマンの下で“Cry of
the White Wolf”や“Captain Justice”などの脚本を担当
していたヴィクトリア・レイクマンという脚本家が執筆した
もので、お話は、11歳の農場暮らしの少女が、自分が空を飛
べることを発見するところから始まる。
ところが彼女は、Ministry of Anomoalous Developmental
Needs and Extra-normal Social Services(通称Madness)
と呼ばれる組織に拉致され、さらに南極の永久凍土の下に設
けられた教育機関Institute of Normality, Stability and
Non-Exceptionality(通称Insame)で特殊な能力を失うよう
に矯正される。しかし彼女は、いろいろな能力を持った仲間
と協力して、大人たちを負かしてしまう、というもの。
確かにダールが書きそうなお話だが、この映画化にはかな
りの視覚効果の投入などで大型の予算規模が予想され、長く
低予算映画の製作に携わってきたレイクマンは、「自分の脚
本がそのような映画化を目指してパラマウントと契約された
ことに、大変なスリルを感じている」ということだ。
またこの計画と同時に、パラマウントからはもう1本、マ
ーシャル・スミスという作家が1997年に発表した“Spares”
というSF作品の映画化の計画も発表されている。
このお話は、子供の成長期の医学的な問題を解決するため
に、子供の誕生と同時にそのクローンを作ることが行われて
いる未来社会で、スペアーと呼ばれるクローンに人間として
の教育を与えようと試みた看護師の物語。もちろんその時代
においては大変なタブーに挑戦することになる訳で、当然そ
こでのトラブルが題材となるものだ。
そしてこの映画化の製作を、年末にアメリカで公開された
パラマウントとドリームワークス共同製作によるフィリップ
・K・ディック原作の映画化“Paycheck”で脚本を担当した
ディーン・ジョーガリスが手掛けることが発表されている。
ただし今回の計画で、ジョーガリスが脚本を担当するとは
されていないが、製作担当であればそれなりの手腕は発揮す
ることだろう。なお上記のダールスタイルの作品も、ジョー
ガリスが製作を担当している。
* *
続いては、製作主演作の『シービスケット』と、製作作品
の『25時』が近日公開されるトビー・マクガイアの計画で、
アンディ・ベアマンのメモワールによる“Electroboy”とい
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01月01日(木)
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