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On the Production
by 井口健二
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■ハウス・オブ・ダイナマイト、エディントンへようこそ、そこにきみはいて、星と月は天の穴
を、2023年9月紹介『花腐し』などの荒井晴彦脚本・監督で
映画化した作品。主演も同作の綾野剛が務めている。
綾野が扮するのは10年前に妻に逃げられ、独身のまま齢40代
を迎えた作家。表面上は娼館に馴染みの娼婦を持つなど自由
を楽しんでいる感じだが、その内面は複雑だ。そんな作家が
ふと立ち寄った画廊で女子大生と巡り合う。
一方、作家には絶対に人に言えない秘密があり、そのコンプ
レックスから恋愛を拒んできた事情もあったのだが…。女子
大生との関係が深まるうちに、彼の抱えていた事情が徐々に
変化していく。
共演は2025年4月紹介『桐島です』にも出ていた咲耶。他に
プロダクションスタッフとしても経歴がある岬あかり。さら
に吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
らが脇を固めている。
上に続いての作家が物語の中心にいる作品になったが、片や
令和に対するは昭和という感じで、この対比はなかなか面白
かった。それにしても本作は、正しく昭和文学という佇まい
なのも楽しくなる。
しかもその時代設定が1969年というのは、僕のような人間に
とっては感慨深い年号であって、その点が物語の中でもしっ
かりと抑えられていたのは嬉しかった。ここが1970年でなか
ったことも面白い。
そんな中での物語だが、何というか男性作家の願望みたいな
ものが横溢しているのは正しくこれが昭和という感じでもあ
りそうだ。こんな展開は令和では許されないかな。そんなこ
とも考えてしまった。
吉行淳之介は1924年生まれ。1969年は45歳だった訳で、まあ
こんな妄想を描いてしまうのかな。もう少し後では僕自身が
試写会の帰りなどに銀座で女性編集者を連れて歩いている姿
を見掛けたこともあったが、和装が格好良かった人だ。
そんな人の頭の中がこんなだったことも興味深かった。男同
士としてその点は理解できる。監督は1947年生まれだから、
その辺の共鳴はあったのだろう。僕が監督の同年代者として
嬉しくなる作品だった。
公開は12月19日より、東京地区はテアトル新宿他にて全国ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。
09月28日(日)
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