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On the Production
by 井口健二
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■未完成の映画、テルマがゆく!、OKAは手ぶらでやってくる、WE LIVE IN TIMEこの時に生きて、摩文仁、ら・かんぱねら
なおこの紹介文は、配給会社ミカタ・エンタテインメントの
招待で試写を観て投稿するものです。
『WE LIVE IN TIMEこの時に生きて』“We Live in Time”
2017年12月17日付題名紹介『ベロニカとの記憶』などの劇作
家ニック・ペインの脚本を、2003年『ダブリン上等!』や、
2015年『ブルックリン』などのジョン・クローリー監督で映
画化した人間ドラマ。
登場するのは男女のカップル。女性は新進気鋭のシェフで男
性は前妻から離婚の書類を送られてきたばかり。そんな2人
が最悪の出会いをし、やがて愛を育み始める。ところが女性
に癌が発覚する。
それでも女性は子供を産んで健気に生き続けようとし、男性
はそんな彼女を精一杯に支援する。しかし彼女に世界一の料
理人を決めるコンテストへの出場が打診され、当然それは彼
女の命を縮めるものだったが…。
そんな物語が、経過時間をシャッフルして目くるめくように
展開されて行く。
出演は2019年9月15日付題名紹介『ファイティング・ファミ
リー』などのフローレンス・ピューと、2010年10月紹介『ソ
ーシャル・ネットワーク』などのアンドリュー・ガーフィー
ルド。史上最高の恋愛映画がこの2人で演じられる。
時間軸をシャッフルするというと2007年1月紹介『バベル』
のアレハンドロ・コンザレス・イニャリトウ監督を思い出す
が、イニャリトウが演出効果を高めるためにその手法を駆使
したのに対して、本作では別の意味合いが感じられる。
それは正に「走馬灯」の例えで、人は死の直前に「走馬灯」
のように過去の記憶が甦ると言われるが、その「走馬灯」を
僕らは観ているのではないか。本作を観終えてそんな思いが
してきたものだ。
ただしこの「走馬灯」は1人のものではなく、複数の人物の
もののようにも思えるが、それは恐らくこの2人を見守って
きた神的な存在のものなのかな。そんな愛に満ちた記憶が描
かれた作品のようにも思えた。
しかもそれが観客にとっても混乱することなく、巧みに描き
切られている。これは見事な作品としか言いようのないもの
だ。そしてそれによって最高の感動が描き尽くされている。
脚本家は劇作家だが、これは映画でしか描けない作品だ。
いやはや脱帽の作品だった。
公開は6月6日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。
『摩文仁 mabuni』
2012年7月紹介『歌えマチグヮー』などの新田義貴監督が、
沖縄本島南端に位置する沖縄戦の激戦地=摩文仁の丘に林立
する慰霊碑の意味について検証するドキュメンタリー。
太平洋戦争末期の沖縄戦では、米軍側は548000人の陣容で沖
縄本島を攻め、それを116400人余りの日本軍が迎え撃つ。そ
して那覇に置かれた軍司令部を放棄した日本軍は本島南部の
摩文仁に移動する。
そこには先に戦禍を避けた沖縄住民の多くが避難しており、
その地になだれ込んだ日本軍は容赦なく沖縄の人々を戦禍に
巻き込んで行く。そして最終的に188000人余りの戦死者が出
たとされ、その内の122000人余りは沖縄の民間人だった。
そんな摩文仁の丘には戦後数多くの慰霊碑が建ち、その中で
も丘の頂上に立つのは、軍司令官だった牛島中将を祀る「黎
明の塔」だという。そこには沖縄駐留自衛隊の将校が毎年の
ように慰霊に訪れていた。
ただし牛島中将は徹底抗戦を指示しさらには沖縄の民間人に
集団自決を命じたまま自殺した張本人であり、死んでいなけ
れば戦犯になったであろう人物に、自衛隊は慰霊を続けてい
たというものだ。さすがに近年は中止しているようだが。
その一方で旧摩文仁村の米須には「魂魄の塔」が建つ。これ
は戦後この地に放置されていた戦没者の遺骸を地元の人たち
が拾い集め、骨塚のようにして祀った最初の慰霊碑ともされ
るものだ。
そしてこの慰霊碑の前には、集団自決を辛くも逃れた老女性
が手向けの花を売る小さな花屋が営まれている。ここには遺
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04月13日(日)
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