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On the Production
by 井口健二
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■バッド・デイ・ドライブ、きっとそれは愛じゃない、ポッド・ジェネレーション、Winterboy、ビヨンド・ユートピア 脱北
ンテ、渋谷のホワイトシネクイント他にて全国ロードショウ
となる。
『Winterboy』“Le lycéen”
2020年3月29日付題名紹介『今宵、 212号室で』などのクリ
ストフ・オノレ脚本、監督で、監督自らの性癖にも関る少年
の姿を描いた自伝的とされる作品。
物語は少年のモノローグのような映像で始まる。そこで主人
公はアルプスを臨む寄宿学校での生活を語っているが、それ
は彼の父親の突然の死によって予想外の展開へと繋がって行
く。その死にはある予兆があったと彼は思いこむ。
そして葬儀の後、不安に苛まれて自暴自棄になった彼はパリ
に住む兄に誘われて初めて彼の地を訪れるが。そこで主人公
はある出逢いを体験することになる。それは破滅への道か、
それとも再生か。
そんな物語が、美しいアルプスの景観と、多様な文化を育む
パリの街並みと共に描かれて行く。
出演は2001年生まれ、本役はオーディションで獲得、そして
2022年サン・セバスティアン国際映画祭にて最優秀主演男優
賞に史上最年少で輝いたというポール・キルシュ。共演はベ
テラン女優のジュリエット・ビノシュ。
さらに2018年11月3日付第31回東京国際映画祭<コンペティ
ション部門>で紹介『アマンダ』(公開題名:アマンダと僕)
などのヴァンサン・ラコスト。本作で長編デビューのエルヴ
ァン・ケポア・ファレらが脇を固めている。
なお監督のオノレがキーとなる役柄で登場している。
また音楽には2023年10月紹介『彼方の閃光』の監督でもある
半野喜弘が参加しているが、本作にはシルヴィ・ヴァルタン
の懐かしの名曲「あなたのとりこ」などもフィーチャーされ
ているものだ。
監督はゲイをカミングアウトしているのでこの物語の基本は
理解するが、その中での主人公の悲しみや苦しみには性癖を
超えての感情が表現され、さらにそこからの展開には新たな
希望もしっかりと描かれていた。
その意味ではマイノリティだけでない、万人に向けてのメッ
セージも感じ取れた。ただ描写にはリアルでかなり際どいも
のもあって、その辺は本作公開がR15+指定となったのも納得
するものだった。
フランスアルプスの美しい景観なども描かれる一方、厳しい
内容の展開される物語だが、温かい心も感じ取れる作品だ。
公開は12月8日より、東京地区はシネスイッチ銀座、新宿武
蔵野館他にて全国順次ロードショウとなる。
『ビヨンド・ユートピア 脱北』“Beyond Utopia”
北朝鮮(朝鮮民主主義共和国)から韓国(大韓民国)への脱出を
正しくリアルで描いたドキュメンタリー。
元々は20年以上前に脱北した女性(イ・ヒョンソ)が発表した
回想録の映画化権をプロデューサーが獲得し、当初は彼女を
中心にした映画化が考えられていたようだ。しかしその制作
を打診された監督はそれだけでは描けないと考える。
そこでプロデューサーの勧めもあって北朝鮮の実情を調べ始
めた監督は、西側の人間には計り知れない北朝鮮の現実を見
ることになる。そして監督はその見識も踏まえて本作の制作
を開始する。
映画ではイ・ヒョンソの講演の模様やインタヴュー。それに
インターネットで見つかった北朝鮮の内情を伝える映像。さ
らにはアーカイヴされている北朝鮮のパレードやマスゲーム
などの映像が綴られる。
それに対して韓国のキム牧師が組織する脱北者の支援組織が
取材され、その中では2組の脱北の模様が詳細に取材されて
行く。その1組目は元北朝鮮で要職にいながら脱北した女性
リ・ソヨンの物語。
母親でもあるソヨンは北朝鮮に残した息子の脱北をキム牧師
に依頼するが、電話だけでやり取りされる北朝鮮内のブロー
カーとの折衝は困難を極める。しかもそこには金正恩政権を
信じて疑わない北朝鮮人民の姿も明らかにされる。
そして2組目は、折しも中国国境で支援組織に保護されたロ
一家の物語。80歳代の老母も含む5人が国境付近で保護され
たとの連絡からその親族を見つけ出し、1万2000qに及ぶ危
険な逃走劇が密着取材される。
それは支援者らによるスマホ映像に始り、監督らが入国でき
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11月12日(日)
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