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On the Production
by 井口健二
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■PERFECT DAYS、笑いのカイブツ、私がやりました、マリの話、東京遭難、彼方の閃光
「女優を辞める日」と題された第2章では、アフレコのため
スタジオにやってきた女性が監督不在の中で台本を読む内に
監督との交流を思い出す。その結果として女優を辞めるのだ
ろうが、具体的な理由は示されない。
「猫のダンス」と題された第3章は女性と愛猫家の老女との
交流を描くもので、監督への想いに悩む女性が老女と共に失
踪したネコを探すうちに、老女との会話の中で監督への想い
を語り始める。
そして第4章は「マリの映画」と題され、フランスに渡って
映画の勉強を始めた女性が短編を作り上げ、監督への手紙と
共にその映画が紹介される。作品はフランス人の出演により
パリで撮影されたもののようだ。
出演は、フランスで俳優として活動し、リメイク版の『キャ
メラを止めるな!』にも出演の成田結美、ピエール瀧、劇団
・青年団所属の松田弘子、演劇集団円会員の戎哲史、それに
フランス俳優のパスカル・ヴォリマーチとデルフィーヌ・ラ
ニエル。
監督は短編映画では受賞歴もあるようで、本作も最初は第4
章に当る部分が短編として作られたもののようだ。しかし作
品の編集中に女性のキャラクターを明確にしたいと考え、初
の長編化に踏み切ったとのことだ。
とは言うものの長編というよりは短編集の感じは否めないか
な。確かに主人公が共通の連作ではあるのだけれど、各章の
エピソードの脈絡などが主人公の思いだけで、その思いが男
性の僕にはストレートには入ってこなかった。
まあ最近この種の映画を批判してきた中では、物語に一貫性
を持たせようとする気持ちは理解するが、1本の作品を通し
た物語をもっとしっかりと構築して欲しかったところだ。そ
れに個々の短編としての物語も少し物足りなかったかな。
公開は12月8日より、東京地区はシモキタエキマエシネマK2
他にて全国順次ロードショウとなる。
『東京遭難』
2018年8月19日付題名紹介『いつもの月夜に米の飯』などの
加藤綾佳による劇場長編第3作。
主人公は業務の接待のキャバクラで深酒し、何処とも知れぬ
終着駅で鞄や財布も失くして目覚めたサラリーマン。そんな
主人公はポケットに残っていた小銭で、キャバクラ嬢に渡さ
れた名刺の番号に電話を掛けるが…。
そのままベンチで寝込んだらしい主人公が目を覚ますと、そ
こはホテルの一室で傍にはキャバクラ嬢と思しき若い女性の
姿があった。そして女性は「助けた代わりに、連休の3日間
を付き合ってくれ」と半ば脅迫のように申し出る。
こうして主人公は若い女性の金で借りたレンタカーでロード
ムーヴィのような旅を始めることになるが。その女性の旅に
は、彼女の過去に纏わるある秘密があった。
出演は、京都府出身で2022年公開の映画『わかりません』で
初主演、続いて主演した短編『寓』がスペイン・シッチェス
映画祭でグランプリを受賞したという木原勝利。それと神奈
川県出身で2021年『ベイビーわるきゅーれ』で敵役を演じた
秋谷百音。
他に2022年11月紹介『餓鬼が笑う』などの永井秀樹、2019年
6月23日付題名紹介『イソップの思うツボ』などの大沢真一
郎、2018年4月29日付題名紹介『ガチ星』などの船崎良。さ
らに今里真、占部房子らが脇を固めている。
加藤監督の作品は、紹介は割愛したが2015年公開の『おんな
のこきらい』も観ていて、長編は全て観ていることになる。
それで前の2作は女性が主人公だったが、今回は男性。でも
ある意味理想的に描かれているのにはほっとしたかな。
しかもいろいろコンプライアンス的に問題になりそうなとこ
ろも、ちゃんと劇中の主人公として謝罪しているのには好感
が持てた。脚本は監督の単独のようだが、この辺はかなり周
到に作られた作品とも言えそうだ。
ここ何作か観た若い監督の作品は何というか独りよがりな感
じがして、いろいろと引っ掛かるところが多いと感じるが、
本作にはそのようなこともなく、正しく安心して観ていられ
る作品と言う感じがした。
しかも女性の抱える問題には、ある種の社会的な側面も存在
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10月01日(日)
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