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On the Production
by 井口健二
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■蔦哲一朗短編集、ドミノ、ラ・ボエーム、リバイバル69〜伝説のロックフェス〜、火の鳥エデンの花
ヨーコによる新バンド「プラスティック・オノ・バンド」に
声を掛ける。そしてレノンは快諾するのだが…。
果たしてオノ・バンドは無事に出演し、フェスティヴァルは
成功するのか?
同フェスの映像では1971年に“Sweet Toronto” という作品
が公開されているが、本作は当時撮影されたフィルムと共に
新たに関係者に行ったインタヴュー、そして当時の音声の記
録などからロン・チャップマン監督が新たに再編集。
通常の演奏の映像だけでなく、そこに至る舞台裏の様子など
も網羅された作品となっている。しかもそれがかなりドタバ
タの連続で、これぞまさにフェスティヴァルの醍醐味という
感じにもなっている。
僕自身、若い頃にはフェスティヴァルに主催者側として参加
した経験もあるから、舞台裏の様子などには懐かしさという
か、今にして思えば憧れのような感じもしてしまう。そんな
わくわく感も思い出させてくれる作品だった。
目の前に想いもよらぬ大物が現れて、どうしていいか分らな
くなる。それは多分この作品に登場する人たちも同じ感じだ
ったのだろう。そんな感覚も見事に再現されている作品だ。
それにしてもジョン・レノンらの一行の護衛をバイカー集団
に任せるなんて。そんな無茶苦茶な状況もしっかりと記録さ
れ、とにかく若さの勝利という感じの作品だった。
公開は10月6日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷、角川シネマ有楽町他にて全国ロードショウとなる。

『火の鳥エデンの花』
漫画家手塚治虫のライフワークとされる『火の鳥』の中から
1976−78年に発表された『望郷篇』を初映像化した作品。
物語の背景は人類が大宇宙に進出している時代。そんな中で
人類が呼吸可能な大気を持つエデン17と名付けられた惑星に
男女のカップルが降り立つ。2人はある事情で地球を脱出、
無人のその星にやってきたのだが…。
その星には大気はあるものの水資源は枯渇しており、2人は
作物を栽培するための水の確保から始めなくてはならなくな
る。そして女性が妊娠し、男性が水脈を発見したとき、不慮
の事故で男性は死亡してしまう。
そんな女性の壮絶なサヴァイヴァル劇や異星人との交流、さ
らには文明の勃興、そして最後は原作の題名にある通りの地
球への望郷などが、1000年を超えるタイムスケールで壮大に
語られている。
監督は日仏合作の長編アニメーション『ムタフカズ』などの
西見祥示朗。キャラクターデザインは2006年11月紹介『鉄コ
ン筋クリート』などの西田達三。音楽を2017年3月紹介『夜
明けを告げるルーのうた』などの村松崇継。製作は『鉄コン
筋クリート』などのSTUDIO4℃が手掛けた。
声優は宮沢りえ、窪塚洋介、イッセー尾形、ドラマ『大病院
占拠』などの子役の吉田帆乃華らが演じている。
手塚治虫の原作は紆余曲折があって何度も書き直され、様々
なヴァージョンが存在するもののようだが、上映時間95分の
本作ではそのエッセンスが見事に凝縮された作品と言えそう
だ。
ただ原作の前半では、多少現代にそぐわないと思われる展開
もあったが、その点は巧みな改変で見事にクリアしている。
この展開は実は筒井康隆の『幻想の未来』などにもあって、
当時としてはタブーへの果敢な挑戦だったものだが、言論が
不自由な現代では描いたら炎上間違いなしだったろう。
その他にも現代の風潮に合わせたような改変はいくつか見ら
れるが、それが全体のテーマを損ねるものではないし、その
辺は原作にリスペクトした上での見事な処置と言っていい。
多分手塚さんが存命ならこうしていたと思えるものだ。
そして何より原作が描いた壮大な宇宙観、人類の未来に対す
る憂いみたいなものが、原作者の思想通りに見事に再現され
た作品と言えそうだ。
公開は11月3日より、全国ロードショウとなる。

09月03日(日)
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