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On the Production
by 井口健二
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■めためた、コンフィデンシャル:国際共助捜査、トンソン荘事件の記録、白鍵と黒鍵の間に、フラッシュオーバー炎の消防隊
る唯一のピアニストだったが、彼も酔客相手の演奏に飽きて
自分を変えることを考えていた。
そしてアメリカ留学を決意した南は、願書に添付するテープ
の録音をクラブの仲間と共に行おうとするが、折悪しくそこ
に界隈の顔役の会長がやってきてしまう。果たしてテープの
録音は成功し、南は留学できるのか?
出演は池松壮亮、仲里依紗。そして森田剛、高橋和也。さら
にクリスタル・ケイ、松尾貴史、パプアニューギニア出身の
サックス奏者・松丸契、川瀬陽太。また杉山ひこひこ、中山
未来、佐野史郎、洞口依子らが脇を固めている。
原作は自伝エッセイだから現実の話だが、映画化ではかなり
トリッキーな脚色で、特に主人公を南と博の2人格に分けて
一方は駆け出し、他方はベテランとしてそれぞれのエピソー
ドを描くのは見事な作劇だった。
さらにこの2人が巧みに交錯し、後半にはファンタシーとも
取れる展開まで用意されている。これが正に映画という感じ
の作品だった。いやはやお見事。これでまたファンタシーフ
ァンには楽しみな人材が増えたようだ。
またこれは原作にも書かれていることなのだろうが、様々な
シチュエーションでのそれぞれに対するジャズの蘊蓄があっ
て、それも楽しめる作品になっていた。なかなか奥の深い作
品だ。
公開は10月6日より、全国ロードショウとなる。

『フラッシュオーバー炎の消防隊』“驚天救援”
2014年6月紹介『インフェルノ 大火災脱出』などのオキサ
イド・パン監督が、中華映画陣を結集して撮ったというディ
ザスターアクション作品。
発端は小規模の地震。しかし安全確認中に小さな見落としが
生じる。そして火災が発生、化学工場が林立する地区で爆発
や類焼が続き、さらに有毒ガスの流出や大規模爆発の恐れが
判明する。そこに余震も襲ってくる。
そんな中での消防隊の決死の消火活動や人命救助の様子。ま
た有毒ガス流出を防ぐ特殊活動などが描かれる。
出演は、2020年2月2日付題名紹介『在りし日の歌』などの
ドゥー・ジアン、2010年11月1日付「東京国際映画祭」で紹
介『鋼のピアノ』などのワン・チエンユエン、2015年『タイ
ガー・マウンテン』などのトン・リーヤー。
さらにハン・シュエ、ユー・ハオミン、2021年『鋼の第7中
隊』などのエルヴィス・ハン、2017年『カイジ』の中国版な
どのワン・ゴーらが脇を固めている。
そしてアクションのコレオグラファーは、1999年『マトリッ
クス』や2002年『インファナル・アフェア』なども手掛けた
ディオン・ラムが担当した。
パン兄弟と言えば、丁寧に演出されたホラーや大量の火薬を
駆使したド派手なアクションでも注目されたが、さらに近年
はCGIも取り入れてその領域は広げられているようだ。
ただ本作に関しては消防の現実を描くことに注心した様で、
劇中ではロボット放水銃やミサイル消火弾など最新の消防機
材が羅列される一方、何かそれらを扱う人間の描き方が物足
りなく感じられた。
同様の化学コンビナート火災を描いた作品では、2019年10月
27日付 <JAPAN CONTENT SHOWCASE 2019>で紹介した『烈火
英雄』が強い印象を残しているものだが、同作ではもっと鮮
烈な人間の生き様みたいなものまで描かれていた。
しかも同作は実際の事件に取材したノンフィクションを映画
化したものだったが、もっと自在にフィクションを描けた筈
の本作で、その辺に物足りなさを感じてしまったものだ。
もちろん本作でもそれなりの人間模様は描かれるが、何とな
くその後の展開が予測できるものばかりで、その点も不満足
に感じてしまった。『烈火英雄』の日本未公開が、本当に残
念だ。
なお本作も on line試写で鑑賞したものだ。
本作は10月6日より、全国ロードショウとなる。

08月13日(日)
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